考古用語辞典 A-Words

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八臂怒形緑ターラー 2009年10月30日更新

八臂怒形緑ターラー

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面白テーマ|基本用語|>八臂怒形緑ターラー

東チベット 17世紀前半 綿布着色 68.5×45.7cm 個人蔵 温和さと恐ろしさを併せ持つ、この崇高で美しい絵画は、緑ターラーの形姿としては極めて稀なものである。力強い慈悲の女尊緑ターラーは放射状に8本の腕を伸ばしている。女尊は緑ターラーの通常の姿勢で座し、足飾りを付け、片足を小蓮華の上にのせ、もう一方を白月盤の乗った大蓮華座の上に置いている。女尊の中央の二臂も通常のターラーの形で、右手は与願印を結び、左手は二つの白い蕾を付けた大きな黄蓮華を持っている。他の六背もよく知られた、力を象徴する持物を持っている。それらは特に装飾的に、繊細に表現されている。右の三手は金剛包丁、ダマル太鼓、花の矢、左の三手は髑髏杯、三叉戟、花の弓を持っている。三叉戟とカトゥヴァンガ(髑髏杖)を上部につけ、その下から白絹の飾りをつけた杖は、曲げた左肘の内側にもたせかけている。女尊は一般的な忿怒尊の装身具をいくつか着けている。五つの頭蓋骨の付いた冠や50の生首をつなげた輪飾りである。頭の周りに軽快にうねった髪は赤橙色に塗られ、愛らしい顔は、小さな歯をわずかに見せて、かすかに眉をしかめている。ピンクの花模様をあしらった短い絹の上着は、胸から両肩にかけて軽くゆるやかに広がり、さざ波のような襞をつくっている。虎皮のスカートは金色の斑点のある赤い飾り帯で留められている。女尊が身につけている、金や宝石の装身具は繊細であまり飾りがないが、じゅうぶん豪華である。赤いヘンナで塗られた掌や足の裏は、インドの男神や女神に見られる由緒ある美の印である。光輝く身光と暗青色の頭光を火炎のアーチが取り囲む中で、女尊は護法神の上にゆったりと座っている。  宮殿の前庭の空中に浮かぶ女尊の蓮華座は、幅広で輪郭だけを描いた花弁で形作られており、両側には2本の葉茎が絡み合って立ち上がり、その先端に白い蕾が見られる。宮殿の入口は、六臂の暗青色の大黒天に護られている。入口の壁の左右にある樹の下には、寄進者達が供物用の机を前にして座っている。多層宮殿の最上階には、ターラーの父母仏である阿弥陀(無量光)が禅定印を結んで鎮座している。宮殿の屋根は橙色、緑色、金色で、壁は黄色、青色、橙色で塗られている。最上部の両側から珍しい波状の雲が漂い、右上部の暗い空に浮かぶ月の下には、飛天がいる。宮殿の両側には、影のような暗青色の樹や淡緑色の樹が何本かそびえている。それは、この宮殿が平穏な森の中のような自然環境に在ることを暗示している。三次元的な空間の印象は、宮殿の壁のジグザグした構成とわずかに宮殿を覗き見る高い視点から生まれている。そして、心を鎖めるような、うまくバランスのとれた色彩の対照的な調和、そうしたものがすべて結びつき、私たちをうっとりとさせ、ターラーの王国へと私たちを導くのである。  この作品は、人気のあるターラーを描いた多くの絵画の中でも、最も霊感に満ちた作品のひとつであり、後伝期のチベット様式の真の才能を示したものである。この作品における構成や建築物の単純さや風景の要素は、おそらく17世紀前半に制作されたことを示唆している。出所:天空の秘宝チベット密教美術展新
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