白傘蓋仏母　2009年10月31日更新

チベット･中国様式
18世紀中期
真鍮打ち出し;部分的に鍍金､各部組合せ(手は別鋳)
彫金､彩色､トルコ石･珊瑚･花紺青の象嵌
高102cm
エルミタージュ美術館､サンクトペテルブルク
千手白傘蓋仏母はターラー女神の特殊な姿で、千手観音に対応する女尊である。彼女の図像は、チベット仏像のパンテオンの中でも、恐らく最も複雑なもののひとつである。女尊は手と同様に、多数の顔や足を持っている。彼女は多くの人間、鳥､獣を踏みつけている。この作品では､女尊の両足の下は立方体に圧縮され、それらは利己的な存在を象徴している。図像的な規範によれば彼女の持物は傘となっているが、ここでは左右の主臂は胸の前で宝瞳を持っている。
　この彫刻は明らかに、技術が高く経験豊富な工人によって造られたものである。彼は白傘蓋仏母の千本の手の一本一本を、女尊を取り囲む6列の光背として配列するように、巧みに工夫している。千の顔と千の足は慣例通りの表現になっているが､それでも200以上の顔はそれぞれ個性的に造られている。
　白傘蓋仏母の彫刻、特にこうした大型のものは、西洋のコレクションでは極めて稀である。彫刻でこうした複雑な図像を表現する難しさが、この尊像彫刻の比較的少ない理山のひとつなのであろう。出所：天空の秘宝チベット密教美術展 2009.09.19更新
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