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金剛座の釈迦牟尼仏陀 2009年11月5日更新
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中央アジア、ハラホト
1227年以前
綿布着色
80×52.5cm
エルミタージュ美術館、サンクトペテルブルク
この仏画は四つの図像のグループからなる15人の尊像が描かれている。中央の尊像はまず間違いなく釈迦牟尼であり、結跏趺坐に座り、右手は触地印、左手は膝の上で平らに仲ばし禅定印とする。上段の五仏の肉髻の頂には赤い宝石の印が付いているけれども、中央の仏陀には付いていない(おそらく絵の具の層がすり減ってしまったのであろう)。
この仏陀の衣は、僧侶の衣のような継ぎ接ぎの衣ではなく、1枚の布からできており、唐草文様の縁取りがある。仏陀から見て右側に立つのは弥勒菩薩で、右手は下げて与願印を結び、左手には小さな白蓮の茎を持つ。その蓮華は弥勒の肩のところで花を付け、その上には小さな金色の瓶が置かれている。仏陀から見て左側には金色の菩薩が立つ。左手には何も持たず与願印を結び、右手には小さな白蓮の茎を持つ。その蓮華は菩薩の肩のところで花を付け、その上には小さな金色の金剛杵が置かれている。こちらはおそらく観音の姿であろう。ここに描かれる観音も弥勒も、ハラホトの他の仏画に見られる姿と大まかなところでは相違はないが、唯一の相違は観音の持物である。ここでは白蓮の上に金剛杵が置かれているが、これは通常は観音の持物ではない。弥勒の蓮華の上の瓶は、この菩薩の標準的な象徴となるものである。
最上段には五仏が描かれる。ここでは五仏は明確に区別することができる。左から右へ順に見ていくと、初めの如来は、右手を胸のところに上げて施無畏印を結んでおり、北方の如来・不空成就である。2番目は、明らかに東方の如来・阿閦であり、右手は触地印、左手は禅定印を結ぶ。3番目、このタンカで中央に描かれる仏陀は、中央の如来・大日であり、両手を胸のところに上げて、右の人指し指を立て、左手は拳を握って、智拳印を結ぶ。次は、西方の如来・阿弥陀であり、両手で禅定印を結ぶ。最後は、南方の如来・宝生に違いない。右手を胸のところに上げて、掌を内側に向けているが、おそらく安慰印の一種であろう。
最下段には、5人の踊る女神が描かれている。彼女たちは皆、何も持たず、手の振りは自然で、姿勢は左右対称的である。彼女たちの名前は分かっていない。明確な図像的徴証がないところから考えると、この5人の女神は、例えば5人の地の女神とか、マーラの娘たちとかいうような、何らかの一群の女神をあらわしているのかもしれない。オルデンブルクは「まったく同じ姿」がトルファンから発見されたフレスコ画に描かれていると記している。彼はドルファンのチベット人の洞窟から発見されたフレスコ画について述べているが、これは彼の第一回ロシア領トルキスタン探検によってソ連に持ち帰られ、現在はエルミタージュ美術館に保存されている。そのフレスコ画にはマーラの娘たちが描かれているが、彼女たちは釈迦牟尼仏が覚りを開くときに踊りを踊って釈迦を誘惑した。
この仏画の両下隅には、それぞれラマ僧が描かれている。この仏画を描いた画家が2人の相違を強調しようとしているのは明らかだが、誰と誰を描いているのかは明らかでない。出所:天空の秘宝チベット密教美術展
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