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阿閦 2009年11月5日更新
西チベットまたはチベット中央部
13世紀
真鍮;彩色、銀象嵌
高42cm
ロバート・ハットフィールド・エルズワース・コレクション
阿閦は、しばしば禅定の仏陀として語られる宇宙的仏陀のグループ、すなわち五仏のひとりである。阿閦は、その部族に関係する尊格の曼荼羅に描かれるときには、中央に描かれる。しかしながら、五仏がまず最初に現れる所作タントラや行タントラや瑜伽タントラの曼荼羅では東側に描かれることがもっとも多く、大日が中央に描かれる。阿閦の色は青で、部族は金剛部である。阿閦は五仏のひとりとして、覚りを開くためにもっとも大きな障害のひとつであり、人類にとって危険な煩悩のひとつである、怒りを克服するのを助ける。阿閦は怒りを究極的な覚りの智慧に転換することを象徴している。阿閦ヘーヴァジュラのような重要なタントラ的な顕現の源となる仏陀でもある。歴史上の仏陀であるよりはむしろ宇宙的な仏陀として、五仏はしばしば仏陀の衣ではなく、菩薩のように宝冠や宝石の装飾を付けた姿であらわされる。阿閦は、通例では右手を触地印とし、左手を膝の上に置く姿の坐像にあらわされる。
この彫刻は、一般に13-15世紀頃の西チベットのものであるとされる様式的なグループに属している。この様式の作品のなかではもっとも上品で、精巧で、洗練されたもののひとつであり、制作年代はおそらく13世紀であろう。14世紀になると、もっと重々しい入念な仕上がりを見せるようになる。細身の胴体や幅の広い肩、細く丸い腕、長くすらりとした脚といった微妙な造形に見られるような像の各部分の特徴は、12世紀後期から13世紀前期頃のチベット中央部の著名な絵画における肉体表現と関係がある。そしてこのことによって、この彫刻がチベット中央部で制作されたことが強く示唆される。しかしながら、真鍮製であることや、宝冠や輪を描く薄い天衣を支えるために支柱を用いる技法は、我々の知るかぎり西チベットにおいて特徴的な制作技法である。出所:天空の秘宝チベット密教美術展
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