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一切智大日 2009年11月5日更新
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チベット中央部
13世紀中期
綿布着色
83×65cm
個人蔵
白いからだと四つの顔を持つ一切智大日は、菩薩たちと、この賢劫の千仏をあらわす小さな如来坐像が描かれた形式化された地に囲まれて座っている。一切智大日は西チベットにおいては主要な仏画であり、リンチェン・サンポの解釈や教説に従って描かれたが、中央部においてはあまり流行らなかった。今日では主として13世紀に制作されたものが少数知られているだけである。
このタンカは疑いなく、この仏陀を描いた最も素晴らしい初期の作品である。その堂々とした姿は、盛り上げられた金色の豪華な装飾や、大量に使われているトルコ石の青や緑の色合い、桃色や赤の色彩のヴアラエティー、他には見られないような配色によって、ますます際だっている。衣や宝石の形式は、明らかに12世紀後期から13世紀前期の様式から伝えられているものであるが、ここではより力強い活気と全く規範的な生気を獲得しており、その特徴はシャル寺の壁画に見られるように14世紀前期まで増加してゆく。輪郭を取り囲む暗い色使いは、一切智大日の台座の周囲に控えめに用いられている-この技法は14世紀から15世紀の絵画を通じて用いられるが、だんだん目立ってくる。2人の大きな脇侍菩薩が、ともに説法印を結んで立っている。仏陀の右側は弥勒で、彼の侍つ花の上には瓶が載っている。仏陀の左側は文殊で、彼の持つ花の上には剣と経典が載っている。この2人の菩薩は脚がとても長い。この目立った特徴は、13世紀から15世紀にかけてよく見られるが、チベットの芸術家がインドやネパールの芸術から受け継いだ仏画の様式的な伝統を、自分たちで解釈して発展させたものである。両側上隅に3人ずつの菩薩が描かれているが、その左端に青文殊が含まれている。これらの菩薩や、極めて詳細に描かれた奇抜なデザインの台座の背板の上部、一切智大日の光背の隙間には法輪、金剛杵、紅蓮華、青蓮華に載った剣といった象徴的なものが、それぞれ赤い光背や龕をともなって散りばめられている。裏面には赤インクを用いてウメ文字の銘文が記されているが、残念ながらほとんど読むことができない。 この絵の様式は、奔放で華麗であると同時に精密で優美であり、作品の繊細さと力強さの両方を巧みに強めている。この作品は13世紀中期の主流をなした様式の作品群に含まれるものであり、おそらくチベット中央部のカギュ派の作品に関係がある。そして、クリーヴランド美術館にある緑ターラーや13世紀から14世紀のサキャ派関係の仏画に見られる様式的な伝統とは、多少異なっている。出所:天空の秘宝チベット密教美術展
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