「リバーシブルな未来 日本・オーストラリアの現代写真」東京都写真美術館

片山真理《in the water #008》2020年 ©Katayama Mari, courtesy of Akio Nagasawa Gallery

名称:「リバーシブルな未来 日本・オーストラリアの現代写真」東京都写真美術館
会期:2021年8月24日(火)~10月31日(日)
休館日:毎週月曜日(月曜日が祝休日の場合は開館し、翌平日休館)
料金:一般 700円/学生 560円/中高生・65歳以上 350円
主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都写真美術館、東京新聞
特別協力: メルボルン大学
住所:〒153-0062東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
TEL:03-3280-0099
URL:東京都写真美術館

このたび東京都写真美術館では、メルボルン大学の協力を得て、同大学教授ナタリー・キングとの共同企画により「リバーシブルな未来 日本・オーストラリアの現代写真」展を開催いたします。本展覧会では、日本とオーストラリアの写真・映像表現を通して、現代を生きる私たちに共通する問題意識に焦点をあてます。
オーストラリアは、植民地時代の先住民の放逐、近代から発達した多文化主義への指向、大陸の40%を非居住地域が占める自然環境など、特有の問題とその認識があります。一方、日本は世界唯一の被爆国であるとともに、東日本大震災に代表される天災を経験しています。 しかしながら、これらの各国特有の歴史的背景や意識をもちながらも、想像をはるかに超える出来事が日々起こる現代において、私たちが国境を越えて共有できる経験や問題意識はますます多くなっています。 この現代社会において、写真表現はどのような意味をもっているでしょうか。写真は、過去や社会と密接に絡み合い、私たちの時間をゆるがし、個人の経験と社会構造をつなぐ力をもっています。
本展の出品作品を通して、私たちは、二項対立と思われているもの―過去と未来、経験と未知、記憶と忘却、生と死―の間を行き来し、その循環から、可逆的な思考という新たな視座を見つけることができるでしょう。

出品作家
マレイ・クラーク、ローズマリー・ラング、ポリクセニ・パパペトロウ、ヴァル・ウェンズ、石内都、片山真理、畠山直哉、横溝静(計8名)

マレイ・クラーク

マレイ・クラーク《ロング・ジャーニー・ホーム2》2018年 ©Maree Clarke, courtesy of Vivien Anderson Gallery
マレイ・クラーク《ロング・ジャーニー・ホーム2》2018年 ©Maree Clarke, courtesy of Vivien Anderson Gallery

1961年ヴィクトリア州スワン・ヒル生まれ。2009年ロイヤル・メルボルン工科大学大学院で文学修士号取得。ヨルタヨルタ、マディマディ、ブンウルン、ウェンバウェンバという4つの部族の血を引く先住民の女性として、ヴィクトリア州北西部で育つ。彼女は30年間にわたり、ヴィクトリア州の州都メルボルンを拠点に、文化的実践、知識の再生に焦点をあてた芸術活動を行ってきた。自身の文化的遺産を肯定し、再びつながりをもつことへの彼女の思いは、写真、ニュー・メディア・アート、インスタレーション、デザイン、ジュエリーなど、彼女の多岐にわたる活動全般に反映されている。近年の個展には「Ancestral Memory」(メルボルン大学、メルボルン、2019年)などがある。またメトロ・トンネル・ラインワイド・コミッションなど、メルボルンにおける滞在制作の機会やコミッションワーク、賞、助成などを国内外で多数受賞している。

ローズマリー・ラング|Rosemary Laing

ローズマリー・ラング《effort and rush #1》2015 年 ©Rosemary Laing, courtesy of Tolarno Galleries
ローズマリー・ラング《effort and rush #1》2015 年 ©Rosemary Laing, courtesy of Tolarno Galleries

1959年クイーンズランド州ブリスベン生まれ。1996年ニューサウスウェールズ大学カレッジ・オブ・ファインアーツ修士課程修了。ラングの制作活動は、コンセプトに基づき、文化的意識に影響を与えた時代や出来事をたどりながら、進行形の物語を形成するプロジェクトである。主要な回顧展に「The Unquiet Landscapes of Rosemary Laing」(シドニー現代美術館、シドニー、2005年;クンストハーレン・ブランツ・クレーデファブリック、デンマーク、2006年)がある。第16回シドニー・ビエンナーレ(2008年)、第52回ヴェネツィア・ビエンナーレ(2007年)、釜山ビエンナーレ(2004年)など、国際美術展にも参加。2019年、第35回東川町国際写真フェスティバルにて〈weather〉(2006年)、〈leak〉(2010年)、〈Buddens〉(2017年)の各シリーズほか一連の作品で海外作家賞を受賞。

ヴァル・ウェンズ|Val Wens

ヴァル・ウェンズ|Val Wens
ヴァル・ウェンズ 《カワァ・イジェン4(イジェン火山の噴火口、インドネシア)》〈バニュワンギ〉より 2018 年 © Val Wens, courtesy of KRONENBERG MAIS WRIGHT

1974年インドネシア・ジャカルタ生まれ。2013年ニューサウスウェールズ大学カレッジ・オブ・ファインアーツのフォトメディア専攻で学士号取得。ウェンズの作品は主にセルフポートレイトであり、写真、ヴィデオ、パフォーマンスの分野にまたがって制作される。近年の個展に「Banyuwangi」(パラッツォ・モラ、ヴェネツィア;クローネンバーグ・メイス・ライト、シドニー、2019年)などがある。2018年にはフルールー・アート・プライズ、ナショナル・フォトグラフィー・プライズ、2015年にはジョセフィン・ウルリック&ウィン・シューベルト・フォトグラフィー・アワードの受賞候補に選出。

ポリクセニ・パパペトロウ|Polixeni Papapetrou

ポリクセニ・パパペトロウ《来訪者》〈世界のはざまで〉より 2012年 © Polixeni Papapetrou, courtesy of Michael Reid Gallery, Jarvis Dooney Galerie
ポリクセニ・パパペトロウ《来訪者》〈世界のはざまで〉より 2012年 © Polixeni Papapetrou, courtesy of Michael Reid Gallery, Jarvis Dooney Galerie

石内 都|Ishiuchi Miyako

石内都《ひろしま #88 donor: Okimoto, S.》2010年 ©Ishiuchi Miyako, courtesy of The Third Gallery Aya
石内都《ひろしま #88 donor: Okimoto, S.》2010年 ©Ishiuchi Miyako, courtesy of The Third Gallery Aya

1947年群馬県桐生市生まれ。神奈川県横須賀市で育つ。多摩美術大学で染織を学んだのち、1975年から写真を始める。「母」をひとりの「女」としてとらえ、身につけていた衣類や遺品を撮影した〈Mother’s〉で2005年、第51回ヴェネツィア・ビエンナーレの日本館代表作家に選出される。広島平和記念資料館に寄贈された被爆者の遺品を撮影した〈ひろしま〉は、2007年より制作され、その後も石内は毎年広島に訪れ、本作を制作し続けている。近年では「石内都展 見える見えない、写真のゆくえ」(西宮市大谷記念美術館、兵庫、2021年)、「Spirits Rising:ひろしま / hiroshima」(ポートランド日本庭園ギャラリー、ポートランド、2020年)、「肌理と写真」(横浜美術館、神奈川、2017年)など国内外の多数の美術館等で個展が開催されている。2014年にハッセルブラッド国際写真賞を受賞。

片山真理|Katayama Mari

片山真理《in the water #008》2020年 ©Katayama Mari, courtesy of Akio Nagasawa Gallery
片山真理《in the water #008》2020年 ©Katayama Mari, courtesy of Akio Nagasawa Gallery

1987年埼玉県生まれ。群馬県太田市で育つ。2012年東京藝術大学大学院にて修士号(美術)を取得。片山の作家活動は、先天性脛骨欠損症のため9歳の時に両足を切断したことで制限のある体となった自らの体験に基づいている。手縫いのオブジェと自分の義足に囲まれた彼女自身を写真に撮ることで、美しさや儚さ、官能性、女性性、脆さ、そして制限のある体となった者として自らの身体的特徴をどう描写するかといった問題を考察している。第58回ヴェネツィア・ビエンナーレ(セントラル・パヴィリオン、アルセナーレ、2019年)、「Mari Katayama」(ミシガン大学美術館、アナーバー、2019年)「Broken Heart」(ホワイト・レインボー、ロンドン、2019年)、「無垢と経験の写真 日本の新進作家 vol.14」(東京都写真美術館、東京、2016年)など、作品は国内外の主要な展覧会で多数紹介されている。初の写真集『GIFT』で2020年に第45回木村伊兵衛写真賞を受賞。

畠山直哉|Hatakeyama Naoya

畠山直哉《2016年6月25日 高田町長砂》〈陸前高田〉より 2016年 ©Hatakeyama Naoya, courtesy of Taka Ishii Gallery
畠山直哉《2016年6月25日 高田町長砂》〈陸前高田〉より 2016年 ©Hatakeyama Naoya, courtesy of Taka Ishii Gallery

1958年岩手県陸前高田市生まれ。1981年筑波大学芸術専門学群卒業、1984年同大学大学院芸術研究科修了。畠山の写真作品は、人工的な環境の中で起こる建造、災害、そして破壊をモチーフとして、「変化」と「再生」という概念を探求している。近年の個展には「Excavating the Future City:畠山直哉の写真」(ミネアポリス美術館、ミネアポリス、2018年)、「陸前高田」(ル・リウ・ユニーク、ナント、2018年)などがある。2020年には「DOMANI・明日2020 傷ついた風景の向こうに」(国立新美術館、東京)、「Thank You Memory – 醸造から創造へ –」(弘前れんが倉庫美術館、青森)などのグループ展に参加。2012年に第13回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展日本館に参加し、金獅子賞を受賞。

横溝 静|Yokomizo Shizuka

横溝静《That Day / あの日》2020年 ©Yokomizo Shizuka, courtesy of Wako Works of Art
横溝静《That Day / あの日》2020年 ©Yokomizo Shizuka, courtesy of Wako Works of Art

1966年東京生まれ、ロンドン在住。1989年中央大学文学部哲学科卒業、同年ロンドンに渡る。チェルシー・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザイン芸術学科に学び、ロンドン大学ゴールドスミス校にて修士課程美術専攻を修了。写真家と被写体の間で交わされるやり取りの瞬間に焦点をあわせることを通して、写真的表象が持つドキュメンタリー的側面とフィクション的側面との間の緊張関係を探求している。「窓展:窓をめぐるアートと建築の旅」(東京国立近代美術館、東京、2019年)、「Japanese Photography from Postwar to Now」(サンフランシスコ近代美術館、サンフランシスコ、2016年)など、国内外のグループ展に多数出品。また、近年の個展に「あの日」(ワコウ・ワークス・オブ・アート、東京、2020年)、「Shizuka Yokomizo」(大和日英基金、ロンドン、2014年)などがある。

共同企画者|
ナタリー・キング|Natalie King
メルボルン大学ヴィクトリアン・カレッジ・オブ・ザ・アーツ教授。オーストラリアを代表するキュレーター、ライター、シニア・リサーチャーとして、アジア太平洋地域を中心に、シンガポール美術館、国立国際美術館、インドネシア国立美術館、シドニー現代美術館、高雄市美術館などで展覧会のキュレーションを行い、国際的な現代アートプロジェクトに携わる。第57回ヴェネツィア・ビエンナーレの「Tracey Moffatt: My Horizon」展(オーストラリア館、ヴェネツィア、2017年)のキュレーターを務め、現在2022年の第59回ヴェネツィア・ビエンナーレでのニュージーランド館のキュレーターとして「Yuki Kihara」展を企画。Thames & HudsonのMini Monographsシリーズの編集者も務める。また、パリの国際美術評論家協会会長、CIMAMやメトロ・トンネル・アートの諮問委員。現代美術への貢献により、2020年にオーストラリア勲章(OAM)受章。

「リバーシブルな未来 日本・オーストラリアの現代写真」東京都写真美術館
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