名称:「渋谷二丁目アートプロジェクト」渋谷二丁目17地区市街地再開発仮囲い
会期:2021年12月1日から2022年9月まで(予定)
主催:渋谷二丁目17地区市街地再開発組合
企画制作: 一般社団法人日本現代美術商協会(CADAN)
協力:imura art gallery, WAITINGROOM, TEZUKAYAMA GALLERY, 青山目黒, NANZUKA, KAYOKOYUKI, MISAKO & ROSEN, KANA KAWANISHI GALLERY
住所:渋谷二丁目17地区市街地
■参加作家:石井海音(imura art gallery)
小林健太(WAITINGROOM)
髙倉大輔(TEZUKAYAMA GALLERY)
田中功起(青山目黒)
佃弘樹(NANZUKA)
野沢裕(KAYOKOYUKI)
森本美絵(MISAKO & ROSEN)
横山隆平(KANA KAWANISHI GALLERY)
現在、渋谷〜青山エリアを繋ぐ渋谷二丁目17地区、渋谷駅東口エリアでは、地上23階建ての複合施設の建設が進んでいます。その建設現場の仮囲いに、この度、CADAN(一般社団法人日本現代美術商協会)から「都市の移り変わり」をテーマに選出された現代アーティスト8名によるアート作品が登場します。
渋谷二丁目17地区再開発事業に参画する東急は、これまでも世界中の文化・芸術の魅力を発信し、街のにぎわいを創出してきました。「渋谷二丁目アートプロジェクト」は、毎日の通勤や通学で往来する周辺オフィスワーカーや学生の方々をはじめ、地域の方々のインスピレーションとなることを目指しています。移り変わっていく街の景色の中で、個々のアーティストによる表現の最先端と、そこにある思考や思想、チャンレンジを感じ取っていただければ幸いです。
駅
石井 海音 Amane Ishii
石井の作品は、幼い頃から描いてきた絵や日常の延長線上である作家の個人的経験がモチーフとして描かれます。「可愛い」を意識して描かれる独自のキャラクターに加え、線づかいも魅力となっています。本作「駅」は、作家にとって初の試みとなるデジタルペインティングとして、パソコン上で描いて制作されました。窓のようにも見える画中画をはじめとして、多数の階層の世界が重なっているような、3次元、4次元的な印象を受ける世界観が現前します。デジタルの強みを生かした、まどろみに誘われるかのような、様々な色の重なりによる表現にもご注目ください。
“人工的でありながらも、ひとつの環境系を構成するような都市の有機的なあり方を、私は大きな人体のように見ることがあります。 地表の建築物は都市の顔、地下構造はボディ、鉄道のネットワークは血管のようです。 そして人体と同じように、どれだけ活気のある産まれたての都市も年月とともに老いていきます。 しかし都市は人体と違い、老朽化した部分を作り直すことで再活性化を望むことができます。 今回私は、生まれ変わった都市の地下鉄の駅を描くことを通して、まだ見ぬ新しい都市の形を表現できたらと思います。 そのとき駅を行き交う個々の人々が、都市に酸素を運ぶヘモグロビンのように鮮やかに動いていることを想像しながら。”
Sneakers (Insectautomobilogy)
スニーカーズ(自動車昆虫論)
小林 健太 Kenta Cobayashi
小林は、自身が撮影した都市や日常の風景写真を画像編集ソフトを用いて絵画のストロークのように変容させたシリーズ「#smudge」が代表作として知られ、一貫して写真というメディウムの拡張を試みています。本作「Sneakers (Insectautomobilogy) 」は、人間と社会システムの関係を考察したシリーズです。StockX.comをはじめとするネットオークションから集めた画像による、デジタルコラージュによって作成されています。
“先史より人類はテクノロジーに美を求めてきた。自動車やスニーカーの曲線美は、現代のテクノロジーが生みだした美的価値のひとつだろう。それはインターネットによって世界中がデータでつながった社会で、多国籍的な感覚によって無意識的に生産され共有され、市場原理による淘汰を経て醸成されてきた、グローバル経済における一つの美の指針であり、現代の私たちが駆り立てられている「未来」への、潜在的なプロパガンダでもある。資本主義の破壊的な消費システムはわれわれの情緒を刺激し、組み替え、集合知によって果てしなく加速する。このコラージュは変化し続ける都市で群知能を獲得したキマイラ、あるいは制御不能に陥り暴走を続けるシステムのデブリである。”
monodramatic / Be fluid
髙倉 大輔 Daisuke Takakura
Go to a flower market and make a bouquet of flowers as big as possible.
田中 功起 Koki Tanaka
異なる背景を持つ人々が共に生きることは可能か。田中はある特殊な状況を設定し、参加者たちがタスク(課題)に取り組む様子を捉えた、共生をめぐる作品を近年、多く制作しています。本作「花市場に行ってできるだけ大きな花束を作る」は2009年に台北で行われたアクションの記録写真です。アーティストは実際に台北の花市場に行き、抱えきれないほどの大きな花束を作りました。あなたならばどのような花束を作るでしょうか。
“変わりゆく都市、その過程で味気なく生りがちな景観に花束の写真を添えて道行く人々にひと時潤いをもたらすことが出来ましたら幸いです。”
Rebuilding the grown roots of desire
佃 弘樹 Hiroki Tsukuda
佃は、SF映画やテレビゲーム、アニメーション、マンガ、音楽、小説などの影響を受けた近未来的な世界観を持つ作品で広く知られています。自身の作品を「外の世界(アウターワールド)」と解説し、そこには幼少の頃から信じてきた未来と、その未来を生きる現実との乖離を読み取ることができます。本作は「成長した欲望の根を再構築する」と題して本プロジェクトのために制作された新作です。
街は建物によって作られているのではなく、そこに生きる人々によって作られ、また育っている。本作は、都市、人々、生命、理念、思念といった関係性を表している。
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野沢 裕 Yutaka Nozawa
野沢裕は、あたりまえに通り過ぎてしまうような見慣れた風景に、複数の時間・空間・偶然を仕掛けた独特の風景をユーモラスに演出した写真や映像、インスタレーションを中心に制作しています。本作は、ある都市の写真と、別の都市の風景を重ねて撮影されました。今回、渋谷の現在の景色と重なり、さらに仮囲いの向こう側で生まれつつある新しい風景を想起する展示となっています。
“見たことのない風景をできるだけ多く見ておこうと思い、あまり目的もなく放浪していた時期があります。その時に過去に訪れた都市の一部を撮った写真をカバンの中に数十枚入れて持ち歩き、目の前の風景にかざしたり、置いたりしながら写真の中の風景と目の前の風景が線や色、意味などで繋がって見える場所を探していました。 この作品はインド北部のレーの風景とスペイン、バレンシアのバス停の一部です。 写真を持ち歩いていると、ふとした時にあの写真が繋がるのではないかと思う風景と出会います。これは無数の可能性の中から偶然繋った一つの風景を描いた風景画だと思っています。”
scrapandbuild
森本 美絵 Mie Morimoto
森本は、20代の頃から現在まで渋谷という街で暮らしながら、一般的な客観性や根拠を持たず、特定の思想に属すことなく日々、物、場所、時代を彼女の視点から撮影し続けています。本作は、渋谷を見直しながら今回新たに撮影した写真を編成して制作しました。東京が2020年を境に変容しつつある中、人々が持つテリトリーはそこにあり続けます。数年後の未来に私たちが目にする森本の写真は、私たちが今は読み取ることのできないものが写っているのではないでしょうか。
“ずっと移りゆく街を撮影している。古いものも新しいものも好きだ。でも壊れていく瞬間は身体の表面が剥がされていくような気持ちにもなる。新しくなる場所を撮影するために他の新しい場所へ行く。足の下には古い街の記憶があるのだろうか?逆光に映る重機の美しさ。手の鳴る方へ向かう。”
WALL stanza
横山 隆平 Ryuhei Yokoyama
横山は、都市開発が目覚ましい渋谷の街に描かれるグラフィティを20年近くライフワークとして撮り溜めてきました。 2020年から取り組む〈WALL〉は、紫外線で瞬時にインクが硬化するUVプリントの技術を活用しながら、渋谷のグラフィティを被写体に数千枚におよぶストリートスナップを用い、それらを幾重にも出力して制作しています。上書きを繰り返し、野晒しで打ち拉がれ流転してゆくグラフィティの在り様を表現することで、変わりゆく都市の姿を見つめる作品です。
“始まりは、都市風景を形成する重要な要素であるストリートの、様々な落書きや広告が混沌と交錯する壁、そしてその存在の有り様であった。その在り方をいくつかの要素に解体し、プロセスを辿った。様々な状態を混在させるために、印刷方法と紙を作業の度に変更するうちに、写っているものは徐々に意味を成さなくなった。アブストラクトな様相が出現し始め、意味のあることなど端から存在しないかのようだった。手元には、何が写っていたか判然としないボロボロのプリントだけが残った。崩れた文字や記号、風景の断片が匿名的に転がっているだけだ。僕はストリートフォトグラファーだった。僕にはそれで充分だった。映像に或るものを拭い去る時、確からしさ、は、やがて。”
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