桑原史成写真展「あわら田~敗戦から15年、ある農村の記録~」桑原史成写真美術館

©桑原史成

名称:桑原史成写真展「あわら田~敗戦から15年、ある農村の記録~」桑原史成写真美術館
会期:2022年1月21日~2022年4月20日
住所:〒699-5605島根県鹿足郡津和野町後田71-2
TEL:0856-72-3171
URL:桑原史成写真美術館

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桑原史成写真美術館の今回の展示は「あわら田」を展示します。
 「あわら田」、耳なれない言葉である。北陸の地方によっては漢字で「湶田」また「磔田」など記すところもあるとされる。
 ここに展示の写真の所在は富山県中新川郡上市町白萩、富山市から数十㎞のところで背後に南アルプスの連山が連なり湧水に恵まれた山村である。
 今から63年前の昭和34年(1959年)は、大学4年の、卒業論文のテーマを「湿田と灌漑」とし“あわら田”の現地調査を行った。展示の多くの写真は、この時の記録である。
 “あわら田”の写真について、ぼくの撮影よりほぼ10年前に写真家で先達の濱谷浩氏が既に発表していて、その評価は高く写真界に話題をまいた。山寒の農村で育ったぼくにとって、田植え時に胸まで泥土の圃場に身体を沈めて農作業を行う状況に強い衝撃を覚えたものだ。
 その翌年(1960年)にぼくは社会に出た。日本は新安保条約をめぐり政治的に激動の真っ只中にあった。ぼくはジャーナリズム界で生きる道を選び報道写真家を志すことになった。デビュー作となる水俣病事件に取りかかったのは、この年であるのだが、それから半世紀余を経て2012年に“あわら田”の白萩集落の現場を再訪した。富山県は湿田を乾田化するため圃場の水を下方に流す土木工事が施工され、湿田の情景はすっかり姿を消していた。
 湿田の耕作は北陸地方(富山県、福井県)での点在する現実であったのだが、戦後の日本の疲弊しきった経済の厳しい状況を象徴しているようでもあって、今でもあの寒村が心に残る。
報道写真家 桑原 史成

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