「ZEPHYR – 西から吹く風の中で – 」Gallery OUT of PLACE NARA

江上里絵子《TWE O20》 2022年、布、アクリル、145.5×112 cm ©︎ Rieko Egami

名称:「ZEPHYR – 西から吹く風の中で – 」Gallery OUT of PLACE NARA
会期:2022年5月27日(金)~2022年6月26日(日)
開館時間:12:00 〜 19:00
休館日:月曜、火曜、水曜
オープニングパーティー:2022年5月28日 18:00 から 19:30 まで
入場料:無料
会場:Gallery OUT of PLACE NARA
住所:〒630-8243 奈良県奈良市今辻子町32-2
TEL:0742-26-1001
URL:Gallery OUT of PLACE NARA 

江上里絵子《TWE O20》 2022年、布、アクリル、145.5×112 cm ©︎ Rieko Egami
江上里絵子《TWE O20》 2022年、布、アクリル、145.5×112 cm ©︎ Rieko Egami

この度の展覧会「ZEPHYR – 西から吹く風の中で – 」では、五影華子、江上里絵子、藤川奈苗の3人の画家を紹介し、それぞれの新作群を展示いたします。
五影は10年前に単身渡欧し、それ以降独自の画風をドイツで確立してきた。画面には多様な色彩を使いながらも、乳白色がかったメディウムを制作過程で繰り返し用いる。薄く白いヴェールを通して見る画面は水の流れや微かな風の動き、湖面のさざ波や反射する光を彷彿とさせる。観るものは曖昧模糊とした世界に深く潜入した後、静謐な水底に辿り着き、そこに横たわる自分自身を発見する、そんな感覚に包まれる。
江上は、眼前のシンプルな景色が実は異なる複数の層が重なり合い構成されているという考えの元に、幾何学的整合性の中に圧倒的な透明感を表現しつつ、しかしどこかにかすかな不協和音を忍ばせた空間を作り上げていく。それは何層にも重なり合った空間であると同時に、作家本人によって全ての要素が冷徹に統合された、ある一瞬の「時間」が画布に定着されているのかもしれない。
藤川の絵からは、未知なる何者かの重厚な叫び声が聞こえてくる様に思うのは筆者だけだろうか。オーソドックスな技法で描きつつも、藤川の探求の先にあるのは誰も見たことのない世界だ。彼女は光が照らし出す形や輪郭ではなく光そのものを描こうとしているのかもしれない。宇宙の中を縦横無尽に走る光の粒子の軌跡、不可視ながらも確かに聞こえる音という波動を捉え可視化しようとしている様にも思える。
地政学上極東に位置する日本にとって、「西」とは従来は欧米中心の世界だったものが、今や、中国、韓国などの東アジアの国々、そしてユーラシア大陸の国々を含めたある意味全世界が日本の「西」に位置し大きな影響を私たちに与えている、2020年代とはそんな時代だ。
今回紹介する作家達も芸術の分野で、今、世界からの強烈な「偏西風」を全身に受けながら、日本人(芸術家)としてのアイデンティティを明確に自覚することが求められているのかもしれない。しかし彼女達はただ風に吹かれるままの存在ではなく、大いなる可能性を秘めたzephyrそのものになり、東西を超えた世界に向けて、風を送り込む役割を今後果たしてくれることになるだろう。

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