Lighter but Heavier 「Stone Letter Project #5ー圧縮と解凍」」京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA(アクア)
- 2022/11/16
- 京都府
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名称:Lighter but Heavier 「Stone Letter Project #5ー圧縮と解凍」」京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA(アクア)
会期:2022年11月19日(土)–2022年12月11日(日)
開館時間:11:00–19:00
会場:京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
展示室:@KCUA 2
休館日:月曜日
入場料:無料
主催:京都市立芸術大学
映像協力:林 勇気
助成:令和3年度 京都市立芸術大学特別研究2021-009
令和4年度 京都市立芸術大学特別研究2022-010
2021年度– 芸資研重点研究プロジェクト
住所:〒604-0052京都府京都市中京区押油小路町238-1
TEL:075-253-1509
URL:京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA(アクア)
私たちの周りには印刷物が溢れています。
そしてその印刷物のほとんどは、オフセット印刷で刷られています。
今日の印刷産業におけるオフセット印刷や版画で使用される金属版は1回限りでその役目を終えますが、オフセット印刷の源流でもある石版印刷では、石版石の表面を研磨すれば何度でも新しい版として使用できます。
1970年頃、日本専売公社京都印刷工場から京都市立芸術大学(以下、京都芸大)にタバコのパッケージ印刷他の印刷 に使用されていた原版である340枚の石版石が移管されました。教育の場での再利用を目的として移管されたこれらの石版石はいくつかの専攻に分配されましたが、当時は金属版の普及もあって西洋画科の版画制作教室(版画専攻の前身)以外で石版を手がける学生は多くはなく、そのほとんどは今熊野校舎、そして1980年のキャンパス移転後には沓掛校舎の倉庫で、約40年間保管されたままになっていました。
これら340枚の石版石の調査をきっかけに、本プロジェクトはスタートしました。
保管されていた石版石は明治から昭和初期まで実際に使用されていたもので、約130年の時を経て明治以来の記憶を留めています。同時に、石版石の表面に残されているのは、最後に描画・印刷された図像の痕跡です。その意味でこれらの「石版」は、印刷産業の歴史の中に何層にも重なったイメージの集積と消去の歴史を語りかける、先人からの手紙のようでもあります。
本展では、340枚の石版石と、それらに残されていた分版[1]された図像を当時と同じ方法で新たに紙に刷って記録した 印刷物などを展示します。そもそも石は、物質が時間をかけて圧縮されることで生まれます。重い石版を倉庫から一枚一枚運び出し、版面上の硬化したインクを洗い落とし、石版プレス機を使用して紙に印刷する作業はまた、アーカイブ=圧縮された大容量のデータを解凍し、ひもとく作業にも似ています。それは、印刷プロセスに内包される制作者の思考と創造性に再び光を当てることでもあると同時に、沓掛校舎の片隅で倉庫に積み上げられ、イメージと時間 を包みこんできた石版という断面を通じて、京都芸大の歴史を違う視点から記録することにもなります。
個人が情報を簡単に入手し、手軽にプリンターで複製出力できる今の時代に、あらためて物質的な質量を伴う石版印刷に実際に触れることは、写真や画像などを記録し生成させる支持体としての「メディア」が、現在でも依然として「物質」であることを再認識させてくれます。当時の印刷産業を牽引した石版の記録/記憶媒体としての強度と性能を実感するとともに、プロジェクトを通して私たちが経験した、過去と現在と未来を往還する体験を多くの人と共有できる展覧会となることを願っています。
田中栄子(Lighter but Heavier/京都市立芸術大学美術学部教授)
アーティスト
Lighter but Heavier(片山浩、衣川泰典、坂井淳二、田中栄子)
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