名称:「山口蓬春の画室から見る日本画家のまなざし」山口蓬春記念館
会期:2022年12月3日(土)〜2023年1月29日(日)
開館時間:午前9時30分~午後3時30分(入館は午後3時まで)
料金:一般 600円 (高校生以下は無料)
団体割引 100円割引(20名以上の団体で1週間前までに予約した場合)
障がい者割引 100円割引(同伴者1名を含む)
連携館割引 100円割引
※連携館:葉山しおさい公園・博物館(大人券のみ)
神奈川県立近代美術館 葉山(企画展の一般券・学生券のみ)
年間入館券 1,800円
※当館展覧会を何度でもご覧いただけるお得な年間入館券も発売中
(発行月から翌年の同月末日まで有効)
休館日:毎週月曜日、1月9日(月・祝)は開館、10日(火)は休館。【年末年始休館日】 12月29日(木)~1月4日(水)
会場:山口蓬春記念館
住所:〒240-0111神奈川県三浦郡葉山町一色2320
TEL:046-875-6094
URL:山口蓬春記念館
山口蓬春(1893-1971)は昭和20年、戦火が広がる東京・祖師谷の地を後にして山形県赤湯に疎開ののち、昭和23年(1948)、現在記念館のある葉山一色の小高い丘に終の棲家を構えました。海をのぞみ、山を背負う家屋での暮らしの中で、蓬春は庭を囲む草木の四季の移ろいに接し、居ながらにして野鳥の囀りが聞こえる環境に一日の大半を過ごし、創造活動に専念しました。
還暦を迎えた昭和28年(1953)、親友で近代数寄屋造りの名匠である吉田五十八(1894-1974)設計による、蓬春念願の新画室が完成します。南北が庭に面した画室で制作する蓬春の視線の先には、一年を通して椿や梅、紅葉といった和物の草木を始め、当時まだ珍しかったミモザアカシアやクリスマスローズのような洋花まで、蓬春夫妻が慈しみ愛でた多種多彩な植物が溢れ、二人の目を楽しませていました。時折、蓬春が窓を広く開け放ち、目の前に広がる穏やかな情景をスケッチする姿も見られました。
そして画室の西には読書家で知られる蓬春のために書庫も新設され、画室から直接通じる扉が設けられました。扉の奥には美術書を中心とした書籍が収められ、稀覯本・大型美術図書の多くは蓬春の蔵書印が捺され、手製の函に入れて丁寧に保管されるなど蓬春の愛着ぶりを見て取ることができます。とりわけ中国宋元画の図録、江戸時代の本草学の和装本、愛らしい小禽の登場する花鳥画譜に心を遊ばせる一方で、蓬春は各時代の自然観に親しみ、古典や伝統を学ぶことで知識と教養、そして研究を深めてゆきました。
蓬春は自著(註)の中で、「新日本画の創造を目指す為には、新しい素材を自己の眼で自然の中から自由に探究することが基盤である」と記しています。また、「新しい感性の働きを発揮するためには、日本画の古典的なものを充分に研究し、新藝術の糧にしなければならない」とも述べています。蓬春の感性は古典と現代との間を自由に行き来し、画室から眺める庭の植物や小鳥たちの生きた姿に、時代の流れを超えても変わらない普遍的な美を見出していたのではないでしょうか。
本展では画室を取り囲む庭の情景を写した蓬春の作品と素描から、画家のまなざしに映った衒いのない自然の姿を探ります。さらに山口蓬春文庫(神奈川県立近代美術館)より当館で初めて公開される『花彙』(江戸時代、18世紀)、『景年花鳥画譜』(明治時代、19世紀)、『宋元名畫集 續』(昭和13年)を展示し、蓬春が理想として追求した自然への美のスタイルを追体験していただきます。
註 山口蓬春『新日本画の技法』昭和26年(1951)、美術出版社
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