名称:「〜響き合う東西の美〜 ガラス・アートの世界」箱根ガラスの森美術館
会期:2022年4月29日(金)から2023年4月16日(日)まで
前期:4月29日(金)~9月25日(日)
後期:9月28日(水)~2023年4月16日(日)
※9/26~27は展示替えの為、一部閉室。2023年1月10日~1月20日休館。
開館時間:午前10時から午後5時30分(ご入館は5時迄)
入館料:大人1,800円 大高生1,300円 小中生600円
主催:箱根ガラスの森美術館、毎日新聞社
後援:箱根町
協力:箱根DMO(一般財団法人 箱根町観光協会)、小田急グループ
住所:住所:〒250-0631神奈川県足柄下郡箱根町仙石原940-48
TEL:0460-86-3111
URL:箱根ガラスの森美術館
約4000年前に生み出されて以来、人々を魅了し続ける人工の素材、ガラス。20世紀に入ると、ガラスは、装飾品や工芸の分野だけではなく、芸術表現の分野でも更なる可能性を秘めた素材として注目を集め、芸術家自身がデザインから制作までを一貫して手掛けたガラス・アートが誕生しました。
本展では前期と後期に展示を分け、ガラス・アート界を牽引する国内外の現代作家6名のガラス作品をご紹介。ガラスという千変万化する素材の魅力を存分に引き出し、工芸の分野に留まらない多様なガラス表現を模索するイタリアとアメリカ、そして日本のアーティストたちの個性が豊かに響き合う、ガラス・アートの世界をご覧ください。
前期展示 ガラスがつなげる内と外の世界
灼熱の炎の中で真っ赤な流動体として生まれ出るガラスは、冷えて固まると光を透過し周りの風景を映し出す、身近にありながら、その実体を捉えるのが難しい不思議な素材です。約2000年前のシリアで生み出された宙吹きと呼ばれるガラス製法は、熔けたガラスに息を吹き入れて器を作る一大発明であり、以来ガラス工芸の礎となった技法です。
その伝統技法を生かし、ガラスの中に空気(空間)を封じ込めた抽象的な造形作品を作り出したのがヴェネチア・ムラーノ島のガラス彫刻家、リヴィオ・セグーゾです。彼は透明感のあるガラスを時に金属や石などの異素材と組み合わせ、ガラスを媒介とする内と外の空間や、他の素材とのハーモニー(詩的な調和)をもたらす彫刻を目指しました。
また、内村由紀は、キャスティングというガラス鋳造技術によって、ガラスの内部により多様な空間を封じ込めることに成功。ガラス内の耐熱石膏をくり抜き、器や人の姿などの様々な形の空間、そこに存在していたであろうものの痕跡を時間から切り離して表現することで、「存在することとは?」という問いへの回答を導きました。
一方、木下良輔は、ガラスがもつ光の透過効果を生かした表現と、着色技法(ステイニング)によるガラスの透過性を消し去った真逆の表現を併用することにより、作品の外側から受けるイメージと、内に秘められた実体(エネルギー)の不一致の可能性に、身近な「本」というテーマで迫っています。
彼らの作品は、それぞれに技法やテーマは違えど、そこにガラスという素材を通した内と外の関係性を私たちに投げかけています。
リヴィオ セグーゾ(1930年~)イタリア
ヴェネチアで生まれ、少年時代からガラスという素材がもつ魅力に強く惹かれ、叔父で世界的に活躍したガラスの巨匠アルフレッド・バルビーニのもとで、ヴェネチアン・グラスの伝統的な技術を習得した。
20歳にして吹きガラスのマエストロとなったリヴィオは、ガラス彫刻作品を研究し、無色透明なガラスの美しさを最大限に引き出す造形と空間、そして光が調和する作品を制作している。1970年代末頃から洗練された円形や楕円形を活かした独自のスタイルを確立。1980年代には一度制作した円形ガラスをいくつかに切断し、元の形とは異なる形体に再構築するという新たな試みも行ってきた。
現在もガラスを金属や大理石、木材などの異素材と組み合わせ、透き通るガラスの美しさと調和した、彼の詩情豊かな内面性を感じさせる作品を制作している。
木下 良輔(1961年~)日本
1984年、東京ガラス工芸研究所研究科修了。その後約20年間、国内外のガラス専門機関でワークショップ等の講師を務める。
電気炉を駆使し、建材用板ガラスを主材に造形作品を発表。金属イオン交換により着色変色するステイニング法を用いた作風で、基軸となるモチーフの多くを“本の形態”で表現し、〈内包するエネルギー〉を制作のテーマとしている。
キルンワークスタジオ アート・グラス・クラブ(神奈川県松田町)を主宰。教室及び多種にわたる依頼制作の傍ら、アンティークから現代まで時代を越えたガラス作品の復元・修復を手掛ける。また、大阪芸術大学工芸学科准教授として若き後進の指導に力を注いでいる。
内村 由紀(1962年~2020年)日本
東京ガラス工芸研究所1期生として、1980年以降の日本のガラス作家第1世代を担ってきた。国内外でガラス技術を教える傍ら、自身でもキルンワークの技術と知識を身に付け、繊細な作品から大規模な作品まで鋳造出来るほどその道に精通している。
探求してきたテーマは「存在する」という概念であり、作家自身が人の感情や物体、生命などあらゆるものの存在に疑問を感じ、それに対して自分なりの解釈で「Exist〜ただよううつわ〜シリーズ」を発表する。
作家活動のみならず、近年、准教授職を務めた大阪芸術大学では、ガラス教育にも情熱を傾け、海外の著名な作家や教育者と幅広く交流をしてきた。ガラスの領域を越えた活動は、工芸全体にも影響を与え、広く評価されている。
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