ザ・トライアングル「八幡亜樹:ベシュバルマクと呼ばないで」京都市京セラ美術館

ザ・トライアングル「八幡亜樹:ベシュバルマクと呼ばないで」京都市京セラ美術館

名称:ザ・トライアングル「八幡亜樹:ベシュバルマクと呼ばないで」京都市京セラ美術館
会期:2023年02月14日(火) 〜 2023年05月28日(日)
会場:京都市京セラ美術館 ザ・トライアングル
時間:10:00~18:00
休館日:月曜日(祝日の場合は開館)
料金:無料
住所:〒606-8344京都府京都市左京区岡崎円勝寺町124
TEL:075-771-4107
URL:京都市京セラ美術館

京都ゆかりの作家を中心に新進作家を育み、京都市京セラ美術館を訪れる方々が気軽に現代美術に触れる場を目的とする展示スペース「ザ・トライアングル」。今回は長らく「辺境」に着目し、独自の取材調査をもとにした映像インスタレーションを制作している現代美術家・八幡亜樹の展示を行います。
八幡は今回、「辺境」の一端を担うものとして近年強く関心を寄せる「手食」をテーマとした新作を発表します。
手食を「人類のパフォーマンス」と表現する八幡は、文明の発達とともに失われていく手食の面影や痕跡、現在の在り方を調査し、アーカイブしていくとともに、行為としての手食に身体性や感覚の解放と拡大、人と人との結びつきや自他の共通性を見出していきます。そして、芸術を通して手食を考え、映し出し、未来への兆しや人間の可能性を含んだ「今」を探ってきました。
本展では中央アジアのカザフスタンとキルギスの伝統的肉料理「ベシュバルマク」に焦点を当てています。“5本の指”を意味するこの料理名に手食との深いつながりを感じ取った八幡は、2022年の秋~冬にかけて現地調査を行いました。
しかし、取材を進める中でこの料理名を巡るカザフスタン人の複雑な思いとアイデンティティの問題、その背景にあるロシアとの関係にも触れていくことになります。ベシュバルマクとは、そもそも植民者であったロシア人によって後から名付けられた料理名だと考えられていたのです。また、この料理名について、手食する遊牧民としてのカザフスタン人を見下すような意味合いも込められていたのでは、と解釈する民族史学者にも出会いました。
調査を進める中で、八幡は手食の原型を遊牧民の面影に求めました。彼女の見つめた遊牧民(ノマド)たちの姿は、その後現地の人から「現代のノマド」と指摘された調査旅行者としての八幡自身と、八幡の旅と並走していた、戦争によって中央アジアへと流離するロシア人男性らの姿と重なり合っていきます。
「ベシュバルマクと呼ばないで//2022」は、そのような複数の視点が過去から現在、未来を結ぶ時間的(歴史的)な軸と、ロシアと中央アジアを結ぶ空間的(地理的)な軸が交わり合いながら、その視点の数の現実を映し出していきます。そしてその複雑な絡まりの中に、人間世界の確かなリアリティを浮かび上がらせていきます。
本展では、主に現地での映像と、ベシュバルマクの記憶をめぐるカザフスタン人女性の詩、戦争で故国を離れたロシア人男性の詩、カザフスタン人アーティストによる作品全体を繋ぐラップ音楽、ファッション広告のようにも見えるバナーで構成されたインスタレーションを展開します。
時に音楽とファッションと接続して「手食」の現代社会への通路を拓きながら、芸術というフィルターを通した手食だからこそ捉えることのできる、人間の生や人類のあゆみに考えを巡らせていきます。
八幡亜樹
1985年東京生まれ、北海道育ち。2008年東京藝術大学美術学部先端芸術表現科卒業。2010年、東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修士課程修了。現在、京都市在住。
これまで開催した主な個展に、「楽園創造 vol.07-八幡亜樹個展」(galleryαM、2014年)、「彼女が生きたかった、今日の日に。」(HENKYO.studio、2021年)。近年参加した主なグループ展に、「逡巡のための風景」(京都芸術センター、2019年)、「79億の他人ーこの星に住む、すべての『わたし』へ」(ボーダレスアートミュージアムNO-MA、滋賀、2021年)など。

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