Nerhol 「Zoe」日本橋三越本店

“carve out / E.M” 2021 インクジェットプリント 16 x 28 cm 額付

名称:Nerhol 「Zoe」日本橋三越本店
会期:2023年2月22日(水) ~ 2023年2月27日(月)
会場:本館6階美術特選画廊 最終日午後5時終了
住所:〒103-8001 東京都中央区日本橋室町1-4-1
TEL: 03-3241-3311
URL: 日本橋三越本店

“carve out / E.M”  

2021 

インクジェットプリント 

27.5 x 17 cm

額付
“carve out / E.M” 2021 インクジェットプリント 27.5 x 17 cm 額付

日本橋三越コンテンポラリーギャラリーで初となる、Nerholの個展を開催いたします。
飯田竜太氏と田中義久氏の2人からなるアーティストデュオ Nerhol(ネルホル)は、2007年の結成以来、自然と人工、言語と図像、写真と彫刻などあらゆる境界を越境する独自の活動とその野心的な作品で国内外で高い評価を得てきました。彫刻家とグラフィックデザイナーという二人の美術家の対話を原点とするその活動は、平面、立体、映像など、モチーフも素材も異なる作品でありながら、それらは一貫して日常で見過ごされがちな事物の存在に注視したものであり、隔たれた過去とのつながりを可視化し現代にあまねく問題を浮かび上がらせます。今展では、2011年以降から継続する、連続撮影した数百枚もの画像紙を重ね彫刻した作品を展示します。連続写真の発明者エドワード・マイブリッジの写真をモチーフに、凝縮された時間の堆積を彫りこみ新たな表現を展開します。Nerholが露わにする時の断片から、必然と偶然が結ばれ成立している‟今”へ目を向ける機会となれば幸いです。ぜひ会場でご覧ください。
日本橋三越本店

"Read the historical facts (petrified wood)”

2021 シリーズより ※画像はイメージです
“Read the historical facts (petrified wood)” 2021 シリーズより ※画像はイメージです

Zoe
Nerhol
エドワード・マイブリッジ(1830 – 1904)は、イングランドのキングストン・アポン・テムズに生まれた。家庭環境にも恵まれたマイブリッジは1851年に単身渡米、そこで写真機を使った連続動作をとらえる独創的なシステムを設計し、今日では運動の写真解析分野の先駆者とされている。マイブリッジが膨大な連続写真を記録するに至った経緯としては、リーランド・スタンフォードの存在が大きい。彼は当時一般に議論されていたギャロップする馬の脚運びについて、4本の脚が地面から離れる瞬間があるという立場で友人と賭けをしていたと言われており、その答えを巡って撮影依頼をした相手がマイブリッジだった。
その後も研究が継続されるなかで、マイブリッジは「生きている輪」の意味を持つ”Zoetrope”を組み合わせた”Zoographiscope”を発明した。まさに生きているような錯覚を与える連続写真は人々に衝撃を与え、これを機にマイブリッジは世界各地で賞賛されるようになる。しかし、写真を取り巻く日進月歩の進化は、1893年のシカゴ・コロンブス万国博覧会で発表されたドイツの写真家アンシュッツによるZoetropeの改良版や、同年発表されたトマス・エジソンによる映写機・キネトスコープを生み、マイブリッジの功績は、それに続く映像革命という大きな波によって忘却されていくことになる。
そこから100年以上の歳月が流れ、写真や映像が日常言語になった今、技術発展によって葬り去られた数々の発明とマイブリッジの写真が同じ類のものであったかといえば、決してそうではないということは美術史が明かすところだ。マルセル・デュシャンの出世作である『階段を降りる裸体No.2』やジャコモ・バッラ『鎖に繋がれた犬のダイナミズム』、フランシス・ベーコンによるマイブリッジの連続写真上のドローイング、E-J. Mareyのクロノフォトグラフなど、マイブリッジに影響を受けた作品は枚挙にいとまがない。作家たちは今まで見えていると錯覚していた「生きている動き」を見つめ直すことで、時間的連続性を多次元的効果として自身の作品に定着しようと様々な形で試みたのである。それは目の前で見えているようで実は”見えていなかった”何気ない物事が、新しい道を切り開いていった美術の歴史でもある。『アニマル・ロコモーション』の出版によってまとめられた約1万9千点程のマイブリッジの写真群は、現在では様々な美術館に保管され、一部の画像は誰でも手にすることができるようになった。私たちはその連続的に捉えた写真群を再び出力し、一枚ずつ時系列に置き重ね、彫り進める。その目的はマイブリッジが捉えようとした一瞬を知ることでも、絵画に倣って四次元的要素を分解し表現することでもなく、はたまた流れるような映画のシークエンスをつくることでもない。
画像という物体に定着した時間を垂直軸に繋ぎ合わせることで生まれる彫刻からは、果たして新たな生態系が見えてくるだろうか?本展では画像が日々の生活の隅々にまで行き渡った現代において、人々を絶えず魅了し続けるマイブリッジの連続写真に向き合いながら、様々な時間軸を編む作品を同時に展示する。「生きている輪」から人々は果たして抜け出したのだろうか?

“carve out / E.M” 2021 インクジェットプリント 16 x 28 cm 額付
“carve out / E.M” 2021 インクジェットプリント 16 x 28 cm 額付

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