名称:「山﨑鈴子展 -石に花咲く-」日本橋三越本店
会期:2023年6月21日(水) ~ 2023年6月26日(月)
会場:本館6階美術特選画廊 最終日午後5時終了
住所:〒103-8001 東京都中央区日本橋室町1-4-1
TEL: 03-3241-3311
URL: 日本橋三越本店
展覧会タイトルの「石に花咲く」とは、実際には起こらないことを例えた言葉であるが、奇跡は、様々な積み重ねから生まれるものだという意思を表している。
私は、あらゆる感情が渦巻く都会の光景とそこに暮らす人々の姿を都会に咲く花や人の手が加わり整えられた植物の形を借りて描き、可視化することを試みてきた。絵画表現は幾重にも絵具を重ね、技法が複雑に絡むことで、新しい何かを形成してゆく過程を疑似体験する様な感覚を与えてくれる。まるで、彫刻に生命が吹き込まれるような喜怒哀楽の感情が生まれてくる感覚は、感情を昇華させることにも役立っている。
花や植物は時に全てを飲み込んでしまうほどの生命力に溢れている。それらを絵画に描き出すと同時に人々の姿を投影している様に私には思えてならない。
山﨑鈴子
山﨑さんの新作について
山﨑鈴子さんは、大学生の頃から私が指導をしてきた前途有望な若い日本画家だ。
一貫して自然の側に身を置いて、静けさに満ちた誠実な作品を描いている。身の回りの何気ない日常に注目し、研ぎ澄まされた美的感覚で完成度の高い作品に仕上げる。今回、新たに混合技法にも挑戦している。しれは私がしばしば用いるものだし、これは日本画というジャンルの偉大な先輩たちを考えれば、常套の展開である。
遡れば、尾形光琳の杜若屏風や紅白梅図は、いまだもってその絵の具の種類や接着の方法がわからない。単純に金箔、岩絵具と膠ということではないのだ。その技法だからこそ辿り着いた新しい地平がそこにはあった。また平成の巨匠たちは膠の代わりにアクリルやカゼイン、木工ボンドを用いて、変えていかなければならない戦後日本画を次のステージに進めていった。
挑戦の先に、日本画には未知の未来が開ける。それはやってみないとわからない。その結果が大きな成果大きな成果を挙げて、美術史は動いてきた。伝統は、守る姿勢ではなく、次の一歩を踏み出す勇気によって、時空という大海原に浮かぶその大きな船体を前に進めてきた。
自分の世界観を見失わないようにしながら、果敢に冒険、実験を重ねる山﨑さんの努力を温かく見守りたい。この先に、山﨑さんの生み出す新しい日本画の可能性が広がっている。
千住博(日本画家・日本藝術院会員)
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