名称:新井碧 + 高橋鮎子 「収縮と剥落 / Contraction and Removal」HIRO OKAMOTO
会場:2023年10月8日(日)~2023年10月22日(日)
会場:HIRO OKAMOTO
開館時間:11:00 〜 19:00
休館日:イベントにより異なる
※御来廊いただく際は、正面玄関インターホンにて「103」をお呼び出しください。
入場料:無料
住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前3-32-2 K’s Apartment 103
TEL:0585-58-3111
URL:HIRO OKAMOTO
本展の起点となるのは、ある一定期間、収縮と剥落、そしてそれに伴う出血を繰り返す身体器官、すなわち子宮です。子宮は子供をなす機能を持ち、そして長らく人に「女性」という性を与える根拠とされてきました。
日常生活から労働環境まで、性差別の存在は社会の至る所に埋め込まれています。社会システムは「男性の身体」とされてきたものを基準に設計されており、例えば、月経や妊娠・出産、およびそれらに対する恐怖に対応できておらず、望まない妊娠や出産は人生設計に影響を与えキャリアを途絶えさせてしまうリスクにもなっています。
こうした社会の中を生きる者の一人として、新井は本展でまず72時間という時間に着目します。それは、緊急避妊薬が高い効果を持つ性交時点からの時間であり、子宮を持つ身体が不安に晒され続ける時間でもあります。また、月経が訪れることは、妊娠がなかったことが確認されることで安堵するタイミングであると同時に、重い負担がのしかかり、社会との摩擦が生じてしまう二面性を持ち得ます。
緊急避妊薬だけでなく、低用量ピルやミレーナをはじめとする子宮内避妊システム、皮下インプラントといった常用的な避妊手段においても、日本ではまだ制度的・経済的なハードルがあります。子宮を持つ人々が、自身の身体の自己決定権を手にできる日はいつ訪れるのか、新井は作品を通して社会に問いかけます。
ルッキズムを中心に、身体性やファッションを扱う作品を制作してきた高橋は、本展では「女性同士の関係性」に目を向けます。
本展の起点を子宮とすることが決まったとき、高橋は平塚らいてうが女性の現状を喩えるのにも用いた「月」をモチーフとすることを選びました。
人間それぞれの人生を月に重ねるとしたら、その満ち欠けは一致するものではなく、時に呼応し、時に離れていくものとなるのではないでしょうか。高橋が本展で描き出すのは、そうした満ち欠けのずれ、ライフステージの変化によって変わりゆく人間同士の関係性です。それは、単に生活リズムや環境が変わるだけではありません。進学、就職、結婚、出産。それぞれが持つ価値観のズレが顕在化し、またそれによって「女性同士」の間に摩擦が起きてしまうこうしたタイミングのことを、高橋は「人生のレイヤーがずれた」と表現します。そして、刺繍や絵画、リズムのズレた時計によって、こうしたズレを「現実にそこにあるもの」として提示します。
本展に展示される高橋の作品に用いられている赤色は、月経のメタファーとしても、摩擦や衝突によってできた傷から滲み出す血としても解釈できます。
本展は女性を自認する2人のアーティストと、男性を自認するキュレーターの意見交換によって企画が進められました。子宮を有する身体に対して与えられる困難は、いかに社会に共有されることができるのか。取り組みそれ自体がコミュニケーションであった本展は、この問いに答えるための足がかりとなるはずです。
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