令和5年度 秋期原画公開「菊と扇」元離宮二条城

令和5年度 秋期原画公開「菊と扇」元離宮二条城

名称:令和5年度 秋期原画公開「菊と扇」元離宮二条城
会期:2023年10月05日(木) 〜 2023年12月03日(日)
会場:元離宮二条城(二条城障壁画 展示収蔵館)
時間:9:00~16:45(入館は16:30まで)
休館日:会期中無休
料金:100円 ※二条城の入城料は別途必要です
住所:〒604-8301京都市中京区二条通堀川西入二条城町541
TEL : 075-841-0096
URL:元離宮二条城

二条城二の丸御殿障壁画(重要文化財)原画を保存・公開している二条城障壁画展示収蔵館。令和5(2023)年度の秋季展では、「菊と扇」をテーマに、二の丸御殿内の黒書院四の間の障壁画に注目してご紹介します。
黒書院は、寛永3年(1626)に後水尾天皇が行幸された際には「小広間」と呼ばれ、天皇に従って二条城を訪れた宮家や門跡、公家衆をもてなす場となりました。特に四の間は公家衆の席として使われたと記録が残っています。
四の間は別名「菊の間」とも呼ばれ、長押の下の襖や壁には、大小の菊が垣根に沿って咲き誇る様が描かれています。菊の花と垣根は、貝殻を原料にした白の絵具・胡粉を厚く塗って描かれており、浮彫のように立体的に見えます。垣根の奥には所々群青の水辺が描かれています。菊と水の主題は、籬(まがき/垣根の一種)と菊と流水が菊を愛した中国の詩人・陶淵明の詩の一節や、童子が菊から滴った露を飲んで長寿を得たという「菊水」の故事、そしてその故事から生まれた「菊慈童」「枕慈童」といった能の演目など、和漢の様々な文芸作品を連想させます。
長押の上には、風に揺らぐススキを背景に、大小合わせて46面の扇が散らされています。扇の形は、扇の折り目を示すものと、きれいに円弧を描くものの二種類に描き分けられ、扇面の図様は一つとして同じものはなく、花鳥草木から水墨山水、大和絵の景物から紋様に至るまでさまざまです。背景に描かれているススキは穂が出ており、季節は秋であることがわかります。
夏に涼をとるために使用する扇は、秋にはもはや不要なもの。この主題は、皇帝の寵愛を失った我が身を秋の扇に例えたとされる中国の後宮の女性が詠んだ詩をもとにしており、日本では和歌等の主題、そして「班女(はんじょ)」という能の演目になりました。
このように長押の上下ともに、能の演目を連想させる画題となっています。能は猿楽とも呼ばれ、朝廷、公家、上級の武家階級で愛好されました。二条城でも徳川家康以来、たびたび猿楽の宴が催されており、後水尾天皇の行幸でも四日目に上演されました。その日の演目には「菊慈童」も「班女」も含まれていませんが、黒書院 四の間の障壁画は、和漢の文学的素養を持つ当時の公家や上級武家に、能の演目を含め、さまざまな文芸作品を想起させたことでしょう。
ぜひ会場で、古典文学の世界に思いを馳せながら障壁画をご高覧ください。

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