「伊藤彦造展 ~美剣士の血とエロティシズム~」弥生美術館

  • 2025/8/10
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「伊藤彦造展 ~美剣士の血とエロティシズム~」弥生美術館

名称:「伊藤彦造展 ~美剣士の血とエロティシズム~」弥生美術館
会期:2025年9月20日(土)〜2025年12月21日(日)
会場:弥生美術館
開館時間:10:00 〜 17:00
休館日:月曜日
   10月13日、11月3日、11月24日は開館
   10月14日、11月4日、11月25日は休館
入場料*一般 1200円、大学生・高校生 1000円、中学生・小学生 500円
住所:〒113-0032 東京都文京区弥生2-4-3 
TEL:03(3812)0012
URL:弥生美術館

豹の眼(ジャガーのめ)『少年倶楽部』1927年(昭和2) 青梅欣二/文
霧の中に浮かぶ金華のおもかげ。剣戟シーンを得意とした彦造であるが、少女を描いても可憐な色気に魅力があった。
豹の眼(ジャガーのめ)『少年倶楽部』1927年(昭和2) 青梅欣二/文 霧の中に浮かぶ金華のおもかげ。剣戟シーンを得意とした彦造であるが、少女を描いても可憐な色気に魅力があった。

伊藤彦造(1904-2004)は、大正末期にデビューし、昭和40年代まで活躍した挿絵画家(さしえがか)です。彼は、剣戟シーンの殺気や、美剣士の魅力をペン画によって濃密に描きあらわし、人気を博しました。
人間の心には、「死」を恐れると同時に魅かれもする「希死欲求」という不思議な心性が存在します。「死」に美しさを見いだし、性的な陶酔を重ね合わせる心性が存在するのです。彦造描く少年や青年の、死に面した極限状況、傷ついた美しい肉体は、人間の心にある、そのような死への渇望を目覚めさせる悪魔的な魅力を伴い、怖い美しさを秘めています。
血にまつわる彦造のエピソードとして最も衝撃的なのは、昭和7年、神武天皇の立像を描くにあたって、絵具の代わりに自らの血を用いたことでしょう。血の匂いを描いた画家といえば浮世絵師の月岡芳年を思い出しますが、彦造の作風には、芳年の影響が感じられます。芳年の「無残絵」と呼ばれる血まみれの作品の数々……あの血の匂いが、彦造の体質の中にある「希死欲求」的なものと呼応したのではないでしょうか?
その彦造はまた、後世の漫画家にも多大な影響を与えました。彦造のペン画の超絶技巧を賛美し、美剣士の妖しい魅力に惹かれたと語る漫画家は多くいらっしゃいます。
つまり彼は、浮世絵と、現代の漫画やアニメを中継する存在でもあるのです。幕末のクールジャパン・浮世絵と、現代のクールジャパン・漫画やアニメは、一見異質に見えますが実はつながりのあるもので、その両者の結び目には、大正から昭和初期に活躍した挿絵画家たちが存在します。中でも伊藤彦造の存在は大きいと言えましょう。この度の展示は、その点を意識しながらご覧いただきたいと思います。

丸橋忠弥めし捕り『冒険活劇文庫』1929年(昭和24)
彦造は好んで追い詰められた男の悲壮さを描いた。
彦造作品の底流には、滅びゆく敗者に心情を寄せる「滅びの美学」がある。
丸橋忠弥めし捕り『冒険活劇文庫』1929年(昭和24) 彦造は好んで追い詰められた男の悲壮さを描いた。 彦造作品の底流には、滅びゆく敗者に心情を寄せる「滅びの美学」がある。
豹の眼(ジャガーのめ)『少年倶楽部』
1927年(昭和2) 青梅欣二/文 株式会社講談社/蔵
アメリカ大陸を舞台に、インカの財宝をめぐって繰り広げられる冒険物語。ヒロイン・金華が、盲目の音楽師にさらわれるシーン。金華の和洋折衷な衣装や、不安定な構図の面白さに着目。
豹の眼(ジャガーのめ)『少年倶楽部』 1927年(昭和2) 青梅欣二/文 株式会社講談社/蔵 アメリカ大陸を舞台に、インカの財宝をめぐって繰り広げられる冒険物語。ヒロイン・金華が、盲目の音楽師にさらわれるシーン。金華の和洋折衷な衣装や、不安定な構図の面白さに着目。
魔界の征者1950年(昭和25)『少年画報』
格闘技の迫力が少年ファンを熱狂させた。
魔界の征者1950年(昭和25)『少年画報』 格闘技の迫力が少年ファンを熱狂させた。
阿修羅天狗『冒険活劇文庫』1950年(昭和25)~1951年(昭和26)野沢純/文
傷ついた少年の、被虐的な美しさ。
阿修羅天狗『冒険活劇文庫』1950年(昭和25)~1951年(昭和26)野沢純/文 傷ついた少年の、被虐的な美しさ。
南総里見八犬伝「カラー版名作全集少年少女世界の文学27巻・日本編2」1969年(昭和44)滝沢馬琴/原作、村上元三/文 現在60代後半から70代の方々が親しんだ少年少女向け名作全集の挿絵。晩年の作品であるが、筆の衰えは感じられない。
南総里見八犬伝「カラー版名作全集少年少女世界の文学27巻・日本編2」1969年(昭和44)滝沢馬琴/原作、村上元三/文 現在60代後半から70代の方々が親しんだ少年少女向け名作全集の挿絵。晩年の作品であるが、筆の衰えは感じられない。

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