「ー化身ー 松下雅寿 日本画展」松坂屋名古屋

  • 2025/9/30
  • 「ー化身ー 松下雅寿 日本画展」松坂屋名古屋 はコメントを受け付けていません
「雪煙龍」10F

名称:「ー化身ー 松下雅寿 日本画展」松坂屋名古屋
会期:2025年10月8日(水)→14日(火) ※会期中無休
会場:本館8階 第一画廊
開館時間:10時~18時 ※入館は閉館30分前まで
住所:〒460-8430 名古屋市中区栄三丁目16番1号
URL:松坂屋名古屋

「昇龍雲」20P
「昇龍雲」20P

たとえばある風景を目の前にして、それを絵にしたい、と思うきっかけ。それは、外形への興味など、表面的な事象だけではないはずです。その場で湧きおこる制作者の感情なり、また受けとめた気の流れなども、作品にしようとする動機として、大きく寄与することと思われます。
 そうした主観に基づく、視覚ではとらえられない制作の構成要素の表出を、いわゆる「写意」と呼ぶのであれば、近年の松下氏の仕事には、自らが感得した見えないものを意図的に可視化して画面を構築する試みがますます冴えを見せていて、すなわち「写意」を大いに感ずるところであるのです。
 背景として考えられるのが、師と仰ぐ手塚雄二氏による、東京上野は東叡山寛永寺の創建400周年を記念しての、根本中堂天井絵という6×12メートルの大画面制作、足掛け5年にわたる壮大なプロジェクト。そこに松下氏は助手として参画しました。自身の画業と並行して、天井絵に携わることへの困難も少なくなかったかもしれません。しかし、師匠と共に試行錯誤を重ねながら、超大作を完成させていく過程を経験した年月は、氏に大いなる実りをもたらした—その証左の一つが今回の個展、と言えるでしょう。
 師匠が容易ならざる努力をもって天井絵に躍らせた龍の姿は、向き合い続ける時を閲して、松下氏のこころの奥に深く刻み込まれました。そして、想像上の産物であるはずの龍は、あたかも目にしえない氏の情念を昇華させるかのように、富士にも、那智の滝にも、雲となり風となりながら空を舞うのです。
 自らの脚で山の頂に立ち、轟く滝の音、ご神木の荘厳さに触れ、綿密な取材を敢行し生み出された力作の数々。はたして画面の中で「化身」を遂げているものは何であるのか。
 作品それぞれが、龍の如く自在に思いを遊ばせていただく縁よすがとなりましたら幸甚です。
大丸松坂屋百貨店

「黒龍雲 華厳」10P
「黒龍雲 華厳」10P

これまでは山や海といった、いわば〈大地の骨格〉のような風景を描くことが多かったのですが、近年は空や雲といった〈形になりきらない風景〉にも惹かれるようになりました。きっかけは、息子が空を見上げて「あの雲、龍みたいだね」と呟いた一言でした。その言葉が心に残り、それ以来森羅万象に姿を変える雲や一瞬現れる情景が、自然に宿る神々の「化身」のように感じられることがあります。
 今回の個展ではその「化身」をテーマに、私が風景の中で見たもの、感じたものをかたちにしました。ご高覧賜りますと幸いです。
松下 雅寿

「雪煙龍」10F
「雪煙龍」10F

関連記事

コメントは利用できません。

ピックアップ記事

  1. 山田和 個展「得体の知れないエネルギー、カオスの時代―桃山サンバ」桃青京都ギャラリー
  2. 「昭和のホーロー看板展」アドミュージアム東京
  3. 「第27回市民作品展」天童市美術館
ページ上部へ戻る