名称:佐宗乃梨子「Romantic Agony」parcel
会期:2023年12月2日(土)〜2023年12月24日(日)
会場:parcel
開館時間:14:00 〜 19:00
休館日:月曜日、火曜日
オープニングパーティー:2023年12月1日(金) 18:00 から 21:00 まで
入場料:無料
住所:〒103-0002 東京都中央区日本橋馬喰町2-2-1 DDD hotel 1F
URL:PARCEL
この度、parcelでは佐宗乃梨子の個展を開催いたします。本年2月に九段下・科学技術館にて行われたアートイベント EASTEAST_Tokyo 2023にて高さ3mを超える大型作品を発表して以来、parcelからは2度目の作品発表となります。
佐宗乃梨子はガラスや金属といった可塑性のある素材を用いて、身体の物質性を主題とした彫刻表現をする作家です。日本書紀に描かれている黄泉の国から怒りを顕に姿を表すイザナミの物語を題材とした大作“youtopia”をはじめ、神話やゾンビといった死生観に関わる架空の存在を主なモチーフとしています。ステンドグラスの手法を用いた佐宗の彫刻には細密までこだわり抜かれたディティール、手指で造形し素材の厚みを操作することによって生み出されるガラスの繊細なゆらぎと同時に、稜線を縁取る金属の力強いラインや時に正面性の強いフォルムを取り入れ荘重さが同居しています。
本展にて発表する大型作品は、まだ古典絵画が主流だった時代にマネが現実社会の裸婦として描いた「オランピア」、その古典的な題材である亡骸を抱く聖母子の姿を表した「ピエタ像」から着想を得ています。中空の薄い殻のような形状は魂の器としての肉体の物質性を顕にするとともに、佐宗はガラスの透過性を活かして作品の内に光を取り入れることで、彫刻の持つ物理的な量感、素材の鈍重な質量を解放しています。山のような形状の抽象的な存在に抱えられている女性は身体に蛆が湧きながらも視線はしっかりとこちらを捉え、薄闇の中に鮮やかで幻想的な光を纏い、不思議な存在感を放ちます。
ワイン瓶や色ガラスを素材にした小型の作品シリーズでは、ギリシャ神話をはじめとした古典彫刻や、物語性を想起させるようなエロスが題材となっています。ガラス鋳造の特性を生かし、原型に残る手指の痕跡、不完全に鋳造されることで偶発的に作られる有機的なかたちによって艶かしさは強調され、その独特なアンバランスさとガラスの表情によって、この現実世界から浮遊し時間性から放たれたようなイメージを作り出しています。
「どんなに文明が進化しても、人間の営みは肉体に縛られている。肉体が性に、性は生に繋がり、それが数珠つなぎのように生命が紡がれている。宇宙は膨張と収縮をくり返して何回も同じサイクルを繰り返しているという話を聞いたことがある。自然が循環するのと同じように、次の世界や次の宇宙も存在するかもしれない。」と佐宗は語ります。
紀元前に生きた人間が紡いだ神話、絵画に描かれた歴史上の物語、現代の娯楽映画として親しまれるゾンビまで、これらは時代や場所を超えて、現実世界における苦悩、死・生に対する問いや祈りから生まれた架空の物語です。文明が発達し様々な疑問が解き明かされた現代でもなお、神話が紡がれた時代と変わらずに人間は自然の大きな営みの中に物質としての身体を持って生まれ、苦悩し、ユートピアもしくはディストピアを空想せずにはいられません。現実に直面することで空想が生まれ、空想することによって近づくことのできるリアリティがあるように、これらは対なるようでいてその境界線は曖昧なものです。リアリティとロマンを繊細に交差させ、その狭間を行き来するように彫刻する佐宗の世界観を是非ご堪能ください。
コメント
トラックバックは利用できません。
コメント (0)
この記事へのコメントはありません。