「物語る黒線たち――デューラー「三大書物」の木版画」国立西洋美術館

  • 2025/10/7
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「物語る黒線たち――デューラー「三大書物」の木版画」国立西洋美術館

名称:「物語る黒線たち――デューラー「三大書物」の木版画」国立西洋美術館
会期:2025年10月25日[土]-2026年2月15日[日]
会場:国立西洋美術館
開館時間:11:00〜19:00(最終日17:00まで)
休館日:月曜日、11月4日[火]、11月25日[火]、12月28日[日]-2026年1月1日[木・祝]、1月13日[火](ただし、11月3日[月・祝]、11月24日[月・休]、1月12日[月・祝]、2月9日[月]は開館)
観覧料:一般500円(400円)、大学生250円(200円)
   本展は常設展の観覧券または企画展「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」(2025年10月25日[土]-2026年2月15日[日])観覧当日に限り、同展観覧券でご覧いただけます。
   ※( )内は20名以上の団体料金(要予約)
住所:〒110-0007  東京都台東区上野公園7番7号
TEL:050-5541-8600
URL:国立西洋美術館

アルブレヒト・デューラー《四人の騎手》『黙示録』5、1497/98年頃、1511年出版(ラテン語版再版)、木版、国立西洋美術館
アルブレヒト・デューラー《四人の騎手》『黙示録』5、1497/98年頃、1511年出版(ラテン語版再版)、木版、国立西洋美術館

「彼が単色で、すなわち黒線を使って表現していないものがあるだろうか」――15世紀末から16世紀初頭にかけて、ドイツの地にあらたなルネサンス芸術を切り拓いたアルブレヒト・デューラー(1471−1528年)は、くしくも自身が亡くなる年に、よく知られた人文主義者ロッテルダムのエラスムスによってそう評されました。デューラーの芸術の核にありつづけたのは、エラスムスが述べたとおり、色彩を欠いた「黒線」でした。彼はそれを前例のないやりかたで操ることで、あらゆる事物や現象、いや、不可視の対象や出来事をも描きだそうとした美術家だったのです。そして、複製媒体である版画の技術的な可能性や表現のポテンシャルをデューラーほどに鋭く見抜き、それらをおのれの手で途方もなく大きく拡張した人物は、美術史上、ほかにいなかったといわなければなりません。黒いインクで印刷された無数の版画が、彼の実験的な造形思考を、空間的に隔てられた各地へ、時間的な距離を超えて後世へと運び、さまざまなひとびとのもとに届けたのです。
この小企画展では、デューラーがみずから出版者となって1511年に刊行したいわゆる「三大書物」――すなわち『黙示録』(ラテン語版再版)、『大受難伝』、『聖母伝』という、当時としてきわめて劃期的だった活字印刷本の木版画群を、一挙にすべてお披露目します。1959年に開館した国立西洋美術館は、近代美術ばかりでなくオールド・マスターの作品も本格的に収集してゆくという方針を1968年の着任後に打ちだした第二代館長の山田智三郎のもと、1970年度にデューラーの木版画連作『大受難伝』を取得しました(ただし、一葉のみは1974年度に購入)。これらは、それ以降に国立西洋美術館がオールド・マスターの版画コレクションを築いてゆくうえでの重要な出発点になったといえます。そして半世紀のときを経て、2020年度に『黙示録』、2022年度には『聖母伝』の購入が叶ったことで、われわれの美術館はついに、デューラーの「三大書物」の木版画をあまねく所蔵するにいたりました。
ご覧いただく「三大書物」の各木版画は、裏面や欄外にラテン語の活字テクストが印刷された1511年の正式出版時の貴重なエディションの作品となります。デューラーがそれらの木版画を物語連作としてのみならず、書物として発表することを念頭に置いて制作していたことを示すべく、エディションにこだわりながら、多年にわたって慎重に購入を進めてきたためです。本展ではまた、デューラーが『黙示録』、『大受難伝』、『聖母伝』を生みだすにあたって造形的に刺戟を受けたと考えられる先行世代の美術家たちの作品を導入部でご紹介します。くわえて、そうしたデューラーの「三大書物」の木版画に触発されてつくられた後続世代の産物もあわせて展示することで、造形思考の連鎖やその多元的なネットワークを浮かびあがらせます。

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