「中村宏展 アナクロニズム(時代錯誤)のその先へ」静岡県立美術館

《円環列車・B-飛行する蒸気機関車》1969年 東京国立近代美術館

名称:「中村宏展 アナクロニズム(時代錯誤)のその先へ」静岡県立美術館
会期:2026年1月20日(火)〜2026年3月15日(日)
会場:静岡県立美術館
開館時間:10:00〜17:30
休館日:月曜日(ただし月曜日が祝日の場合は開館、翌日休館)
入場料:一般1400円、70歳以上700円、大学生以下無料
住所:〒422-8002 静岡県静岡市谷田53-2
TEL:054-263-5755
URL:静岡県立美術館

「中村宏展 アナクロニズム(時代錯誤)のその先へ」静岡県立美術館
「中村宏展 アナクロニズム(時代錯誤)のその先へ」静岡県立美術館

概要:
「中村宏展 アナクロニズム(時代錯誤)のその先へ」は、浜松市出身であり、日本戦後美術の中で特異な位置を占める画家・中村宏(1932年生)の70年以上にわたる画業を包括的に紹介する大規模な回顧展である。戦後日本の社会とアートの変容を背景に、常に時代と対峙しながらも“描くこと”にこだわり続けたその軌跡を、多面的な視点から再評価する試みとなっている。

1950年代半ばに中村が手がけた「ルポルタージュ絵画」は、社会の現実を鋭く描き出す批評的リアリズムの先駆として知られる。続く1960〜70年代には、高度経済成長期の時代精神を反映しながら、セーラー服姿の女学生や機関車といった象徴的モチーフを用いた絵画やイラストレーションによって独自の視覚言語を確立した。これらの作品には、現代社会への風刺やメディア的イメージの批評が込められ、アナクロニズム(時代錯誤)という言葉に象徴されるように、過去と現在、現実と幻想を交錯させる複雑な構造が見て取れる。

《ブーツと汽車》1966年 名古屋市美術館
《ブーツと汽車》1966年 名古屋市美術館

また本展では、映画や漫画など同時代の視覚文化から受けた影響、さらには同時代芸術家との交流など、中村の創造を支えた文脈的要素にも焦点が当てられる。1970年代以降の作品では、イメージの分解・再構成や記憶の層化といった手法を通じて、絵画というメディウムの本質的問い直しが進められており、その変遷は日本美術史における「描く行為」の再定義として重要な意味を持つ。

《砂川五番》1955年 東京都現代美術館
《砂川五番》1955年 東京都現代美術館

「アナクロニズムのその先へ」という副題は、過去を単なる懐古としてではなく、異なる時間軸を重ね合わせる創造の契機としてとらえる中村の芸術理念を示す言葉である。彼の作品群は、現実の断片と記憶の残響を画面に再構築し、時間を超えた人間の想像力の可能性を問いかける。中村宏の長年にわたる挑戦を通じて、絵画という古典的メディアがなおも現代において生き続ける理由を探る展覧会である。

《鳥》1956年 浜松市美術館
《鳥》1956年 浜松市美術館

作家略歴:
【中村宏(なかむら ひろし)】
1932年静岡県浜松市に生まれる。1956年東京芸術大学美術学部絵画科卒業。在学中から社会的リアリズムを志向し、1950年代半ばに「ルポルタージュ絵画」を発表。1960年代にはイラストレーションやポップカルチャーの要素を取り入れた絵画で注目される。1970年代以降、時間・記憶・メディアを主題とする作品を多数発表し、独自の「時代錯誤」的世界観を築く。戦後日本美術の批評的知性として、絵画表現の可能性を探り続けている。

《蜂起せよ少女》1959年 練馬区立美術館
《蜂起せよ少女》1959年 練馬区立美術館
《階段にて》1959-1960年 宮城県美術館
《階段にて》1959-1960年 宮城県美術館
《ある肖像》1962年 栃木県立美術館
《ある肖像》1962年 栃木県立美術館
《遠足》1967年 板橋区立美術館
《遠足》1967年 板橋区立美術館
《似而非機械》1971年 練馬区立美術館
《似而非機械》1971年 練馬区立美術館
《聖火千里行》1964年 高松市美術館
《聖火千里行》1964年 高松市美術館
《4半面の反復(12)》2019年 静岡県立美術館
《4半面の反復(12)》2019年 静岡県立美術館
《図鑑8・隊列》2007年 浜松市美術館
《図鑑8・隊列》2007年 浜松市美術館
《円環列車・B-飛行する蒸気機関車》1969年 東京国立近代美術館
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