名称:「國廣再臨 戦国武将 足利長尾の武と美―その命脈は永遠に―」足利市立美術館
会期:2022年2月11日(金・祝)~3月27日(日)
開館時間:午前10時~午後6時(入館は午後5時30分まで)
休館日:月曜日(3月21日は開館)、2月24日(木)、3月22日(火)
観覧料:一般(高校生以上)1,000円、中学生以下、各種障がい者手帳をご呈示の方は無料
住所:〒326-0814栃木県足利市通2-14-7
TEL:0284-43-3131
URL:足利市立美術館
足利長尾氏は、戦国時代、文正元年(1466)から天正十八年(1590)まで一二〇年以上にわたり足利の地を治めました。各大名がしのぎを削り日々勢力域の変化する時代、歴代長尾氏は地域権力との離合集散を繰り返しながら、各勢力のはざまに位置するこの地を治め続けたのです。
明日をも知れない極度に緊張した時代背景のなか、歴代長尾氏は芸術と学問を重んじました。武将みずから絵筆を執り、歌を詠む教養人であり、「風流(ふりゅう)の太守(たいしゅ)」の気風を備えていました。この文雅を好む風土は「歴史と文化のまち足利」の源流であり、今に引き継がれています。
初代長尾景人(かげひと)は足利荘入部後の応仁元年(1467)、足利学校を戦乱の地からいちはやく現在の場所(足利市昌平町)へ移設しました。続く三代景長(かげなが)、四代憲長(のりなが)、五代政長(まさなが*当長、景長)は画技にたけ、それぞれ自画像を遺しています。特に三代景長の《山水図》は優れており、足利長尾氏と初期狩野派との関連も注目されています。本展では歴代長尾氏の作品と北関東に伝来する狩野正信の作品をともに展示し、この地に胎動する、武人たちの求めた「美」を見出します。
彼らの作品に共通するのは緊張感です。ここに彼らの美意識があると思われます。それは先ほど述べた時代背景と無関係ではありません。緊張感が最も強く現れるものとして刀剣があります。六代顕長(あきなが)は刀工国広(くにひろ)と邂逅し、稀代の名刀《山姥切国広》が作られました。これは、戦乱のさなか、ある種の極限状態で生み出された「美」です。
国広は《山姥切国広》と同じ年に《布袋国広》を足利学校で作刀しました。足利学校は戦乱の時代にあって学灯をまもりとおした当時最大規模の学府でした。武将たちは足利学校を保護し、支援しました。それは足利学校が彼らの心の支えになっていたからです。国広もまた足利学校を慕い、《布袋国広》を鍛えました。本刀には彼の思いが込められています。それは泰平の世の到来への祈りかもしれません。
本展は足利市制100周年記念事業です。戦乱のさなかにあって文化は守り伝えられました。そして幾星霜(いくせいそう)を経た現代にまで遺されています。そこには有名無名の先人たちの後世に対する愛情があります。それを基盤として今の私たちの暮らしがあります。ここにはどんなに時代が変わろうとも動かない「軸」があります。本展がその「軸」を示す手立てとなれば望外の喜びです。
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