名称:「project N 86 諏訪未知」東京オペラシティ アートギャラリー
期間:2022年4月16日(土)~2022年6月22日(水)
開館時間:11:00 ─ 19:00(入場は18:30まで)
休館日:月曜日(ただし5月2日は開館)
入場料:企画展「篠田桃紅展」の入場料に含まれます。
主催:公益財団法人 東京オペラシティ文化財団
住所:〒163-1403東京都新宿区西新宿3-20-2
TEL:03-5777-8600
URL:東京オペラシティ アートギャラリー
身体感覚からの表現 ── 諏訪未知の絵画
諏訪未知の絵画は、そのほとんどが正方形のキャンバスに描かれている。ピンクやオレンジなどももちいられるが、概して色彩は抑制された滋味のあるものが多い。ことさら具体的なモティーフを明示するイメージはなく、単色(モノクローム)の矩形のなかに幾何学風の形象(イメージ)が配置されている。なかには、画面を4つに分割した作品や、左右(あるいは天地)が対称に描かれた作品もある。万華鏡を覗き込んだかのような画面では、イメージは重力から解放され、その結果、作品は、どの向きで展示してもよさそうな錯覚を与える。
幾何学風の形象といっても、純然たる幾何学形態ではない。直線にしても曲線にしても、あるいは矩形にしても円にしても、決して無機的なものではなく、随所に手描きのたどたどしさを露呈している。そのためか、諏訪の画面はみな、穏やかな筆致や暖色系の彩色とも相俟って、しっとりとした不思議な温もりのようなものを漂わせている。
正方形のキャンバスは、真四角な窓を連想させる。よく知られているように、イタリア・ルネサンス期の建築家で人文学者のアルベルティは、その『絵画論』(1435年)のなかで、絵画を「壁に開いた窓」になぞらえた。「窓」の向こう側には、風景画であれば、こちら側の室内からみえる外界の景色が広がり、宗教画や歴史画であれば、日常の現実とは異なる非日常の神話の世界が出現することになる。
もっとも、不思議な温もりのある諏訪の正方形の画面は、窓よりも、むしろハンカチやスカーフを想起させるかも知れない。陰影も遠近感もない画面は、平坦(フラット)なまま、奥行きを頑なに拒んでいるようにみえる。おそらくそれは、濃淡やコントラストをはじめ、色面の大きさや形状など、綿密に計算された賦彩の効果によるものに違いない。こうして諏訪の作品では、すべてのイメージが等価に描かれ、地と図、背景と対象の関係がきわめて曖昧に表現されている。
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