「エヴェリン・タオチェン・ワン  EVELYN TAOCHENG WANG」KAYOKOYUKI

「エヴェリン・タオチェン・ワン  EVELYN TAOCHENG WANG」KAYOKOYUKI

名称:「エヴェリン・タオチェン・ワン  EVELYN TAOCHENG WANG」KAYOKOYUKI
会期:2022年6月24日(金)~2022年7月31日(日)
開館時間:12:00 〜 19:00 日曜日は17:00まで
休館日:月曜、火曜、祝日
オープニングパーティー:2022年6月24日 17:00 から 19:00 まで
入場料:無料
協力:オランダ王国大使館
会場:KAYOKOYUKI
住所:〒170-0003 東京都豊島区駒込2-14-2
TEL:03-6873-6306
URL:KAYOKOYUKI

この度KAYOKOYUKIは、エヴェリン・タオチェン・ワンによる日本初個展、「Norwegian Music in Dutch Window -オランダの窓中にあるノルウェーの音楽」を開催いたします。コロナの影響もあり、1年半の準備期間を経ての開催となりました。ぜひともこの機会にご高覧くださいませ。

オランダを拠点とする中国出身のアーティスト、エヴェリン・タオチェン・ワンは、絵画、パフォーマンス、インスタレーション、書道などの幅広い表現手法をもとに、中国の伝統絵画の流用、女性性、文化的アイデンティティといったテーマを横断的に扱ってきました。彼女は近年のシリーズ作品「オランダの窓中にあるノルウェーの音楽」で窓をモチーフとしています。それは、多層的かつ稠密な構造をそなえており、また際限のない解釈のありようを、一つの光景として差し出してもいます。

窓、とりわけオランダ国内にあり、建築的な特徴が実際に参照されてきた窓は、エヴェリンの人生の多くの場面で、その枠の向こうに広がる景色をも含め、象徴的な意味合いを持ってきました。アーティスト自身とその表現にとって意義のあるそうした窓の数々を、エヴェリンは記憶だけを頼りに、メタフィジカルな実存性をもとに描き出します。というのもエヴェリンにとって「印象」とは、消費行為が加熱して視覚性が支配する、そんな現代社会に目を配る代替的手段につながる価値を有しているのです※1。

美術史とその伝統への造詣を深め、また性差や民族的な出自、社会経済的な面でマイノリティとしての自覚を迫られるなか、エヴェリンはアイデンティティと表象の問題にいたく関心を寄せるようになりました。エヴェリンによる素材の理知的な見せ方と繊細な筆致、捕らわれのない手法。くわえて、作品内にみられる言葉の数々であるとともに、独創的な文法と詩的なユーモアをそなえた作品タイトルに当てはまる※2、言語の列挙の仕方やコンポジション。これらは、微に入り細を穿つように、エヴェリンを取り巻く世界から彼女が感じとる、プレッシャーや不安定さを表しています。

また、「自己とは何か」というテーマと向き合い、複数の表現媒体を扱いながらそれぞれを独立したアイデンティティとみなしてきたエヴェリンは、いつしかそれらを区分けすることの正当性を疑い、その共存を受け入れるようになりました。

本展でエヴェリンが目指しているのは、一つの物語の共有です。その物語は、たとえはっきりとした精緻な答えを導かなくとも、望むらくは、仏教の公案や詩情ある俳句の一片のように機能する、そんな物語なのです。エヴェリンは、作品に決まった意味を持たせてはいませんが、しかし継続中のシリーズである「オランダの窓」に投影された、自身にとって核となる「自己」をめぐるその問いかけによって彼女は、ちょうどノルウェーの音楽のように、人々や事物、言葉、コンテクストとのさりげない日常の出会いを内観し、その真摯な音色に耳を傾けるための時間を、いっそう深い自己理解に向けた「窓」という形で、観客に促しているのかもしれません。

関連記事

コメント

  • トラックバックは利用できません。

  • コメント (0)

  1. この記事へのコメントはありません。

ピックアップ記事

  1. 特別展「鳥 ~ゲノム解析で解き明かす新しい鳥類の系統~」国立科学博物館
  2. 特別企画展「源氏物語とみやび」佐野市立吉澤記念美術館
  3. 「没後30年・ドアノーの愛したパリ ROBERT DOISNEAU展」何必館・京都現代美術館
ページ上部へ戻る