名称:Ura. 個展「Delight」YUGEN Gallery
会期:2022.07.28(THU) – 2022.08.02(TUE)
会場:YUGEN Gallery
開館時間:平日:14:00 〜 19:00
土日:13:00 〜 19:00
※最終日のみ17:00終了
休館日:なし
入館料:無料
住所:〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2-12-19 東建インターナショナルビル3F
TEL:03-5330-2210
URL:YUGEN Gallery
YUGEN Galleryにて2022年7月28日(木)〜8月2日(火)の期間、羊毛造形作家Ura.の個展「Delight」を開催します。
5年ぶりの新作。作家活動の集大成
身体を寄せ合い気持ち良さそうにくつろぐコツメカワウソ、母親に抱かれた赤ん坊のように安心しきった表情のボストンテリア…観る者の気持ちをおおらかにする動物モチーフの作品を発表する羊毛造形作家Ura.(うら)。兵庫県宝塚市出身。桑沢デザイン研究所でドレスデザインを学んだ後、靴職人を目指します。しかし、イメージはあるものの思い通りの靴を作ることができず、靴の広告を見るだけで吐き気をもよおすほど苦悩の時期を過ごします。靴作りを続けるのか迷っていた時、気分転換として訪れたのが羊毛造形のワークショップでした。
想像の象徴として現れる動物
それまで靴作りでは自身が思い描く完成形への道筋が見えなかったのが、羊毛造形では「手が勝手に動き」イメージ通りの形が出来上がったといいます。「モノを作る人間にならなければ」と思い、10年ほどモノ作りをするなかで初めて自分が解放された瞬間であり、作業をしながら涙がこぼれてくるほどの喜びがあったと話します。羊毛造形を始めて間もなく、友人の鞄作家から二人展の企画に誘われ、何ものでもなかった自身の制作物を出品することへの恐怖心から心を落ち着かせてくれるメンター的存在の動物を求め、作ったのが大きな羊の作品でした。
圧縮し固めた羊毛の上に色を重ね、ニードル(針)を刺し毛の繊維を絡め合わせながら動物をかたどるUra.。頭の中に浮かび上がってきたイメージは、下絵を作ることもなく手が喜ぶように動かすと自然と形作られ、あるべき大きさに収まっていくと話します。
「子どもの頃は大きな穴があったら、そこに入ってずっと暮らしていきたいと考えるほど恥ずかしがり屋で、人前で何かを披露する人生なんてあり得ないと思っていた」。自身の想像の象徴としての動物たちが彼女を穴に引き入れることなく、外へと連れ出します。
作品を介して人の交流が生まれ、大分県別府市の別府北高架商店街での展示、和歌山県JRきのくに線の車両や駅をアートで埋め尽くす「紀の国トレイナート」への参加など、Ura.と動物たちは各土地を巡るようになります。
差異に見出す「生きる喜び」
それから出産、育児のために作家活動を休止していましたが、今回5年ぶりの新作発表。改めてモノを作ることができる喜び、そして仏教用語で修行の第一歩を表す「歓喜地」から選んだタイトルが「Delight」。旧作50点以上を含む計72点という展示作品の数はまさに喜びの大きさであり、作家として新たな一歩を踏み出す意思の表れです。本展は、いちばん最初に作った羊の作品から13年間の作家活動の集大成といえる展示となります。
活動を休止していた間、作家として生きていくことを諦めようとも考えていたUra.。YUGEN Galleryからのオファーで「自分と動物のことを覚えていてくれたことに心が湧き、冬眠していたキツネが舞い踊って自分と一緒に喜んでいる」イメージを得て、制作が始まりました。そんな目覚めをテーマとしたのが新作「Awakening」。キツネのほかにウサギなど4体の動物は羊毛作家として生を受けた自身の原初の喜びそのものを、そして作家活動のテーマである「生きる喜び、楽しみ」の享受を存分に表現しています。
もう一方の新作「IceCream」は、犬のビション・フリーゼをモチーフにした作品「マルちゃん」をアイスクリームに見立てて表現。溶けるマルちゃんと、溶けていないマルちゃんが思い思いに過ごすように会場に佇んでいます。それはUra.自身はカチカチに硬くなったアイスクリームを好み、娘はドロドロに溶けたシェイク状のものが好きなことから、人生における幸せな時間や美味しさは人によって違うという差異性に注目した作品です。
何からも搾取されないクリエイティブ
雑貨として同じものを作り、販売されることが多い羊毛造形。Ura.はそれが「苦しくて作れなかった」と話します。同じ動物でもそれぞれ個性が違い、それを「大きな気持ちで受け止められる」ことを強く願い、差異に生きる喜びを見出すのです。
Ura.により生命を吹き込まれた動物たちは誰をも受け入れ、その目は先行きの見えない社会でシビアな競争に巻き込まれていく現代にあって、何からも搾取されることなく自分の得意なことで生活し、穏やかに暮らしていくことの大切さを見つめます。
彼女自身、苦しく閉ざされようとしていたモノ作りが、たまたまワークショップを訪れたことで人生において「やらずにはいられない」ものに確定します。それは、私たちの生きる社会も偶然性のもとで開かれていることで、社会をより善きものへと導くクリエイティブが実現することを教えてくれます。そして、それは無意識から立ち上がることも。散策の途中にふと出会ったような動物たちはその可能性に歓喜し、私たちの誇りを何からも分かつことなく全肯定してくれるのです。
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