名称:共生の芸術祭「わたしはメモリー」京都市美術館 別館
会期:2022年12月15日(木)–12月25日(日)
休館日:月曜
開館時間:10:00-18:00 ※最終日は16:00まで。
会場:京都市美術館 別館
料金:無料
主催:きょうと障害者文化芸術推進機構
協力:社会福祉法人くすのき会、社会福祉法人みずなぎ学園、社会福祉法人光林会、社会福祉法人館邑会、もうひとつの美術館、社会福祉法人 かんな会、三原巌原画を観る会実行委員会、社会福祉法人松花苑(順不同)
住所:〒606-8342 京都府京都市左京区岡崎最勝寺町13
TEL:050-1110-7655
URL:京都市美術館 別館
記憶はいつか消えてなくなるのでしょうか。私たちの中にある記憶は他者から見ることはできませんが、表現によって何らかの形が与えられる時、それは他者にも共有することが可能になります。そのように個別の経験が、ある技術や意志によって外部化され、鑑賞体験を通じて他者の記憶の一部となることで、記憶は多くの人に伝播していきます。それはまるで記憶自体が意思を持ち、私たちを媒介としながら生き続けていくことを望んでいるかのようにも思えます。
本展では、障害のある作家の表現とその背景にある体験や周囲の環境にも着目し、作品が持つ記憶とその保存について迫ります。個々の記憶が表現を通じて集団の記憶に変わっていくこと、それは他者の生きる時間が自らのリアリティとともに新しい時間を歩んでいくことであり、時間や場所を超えて、私たちが他者と共に生きる方法でもあるのではないでしょうか。
出展作家
小幡正雄
小原美鶴
似里力
西澤彰
泰野良夫
三原巌
森川大輔
プロフィール
小幡正雄 (おばた・まさお)
1943年生まれ、2010年没。兵庫県。
40代なかばから暮らしたひふみ園にて、ひっそりと絵を描き溜め始めた小幡正雄は、美術家・東山嘉事との出逢いをきっかけに、縁がつながり、1998年から国内外の数多くの展覧会に出展し、瞬く間に日本を代表するアウトサイダー・アート/アール・ブリュットのアーティストと呼ばれるようになった。そして、2010年1月に亡くなり1000点を超える作品が遺された。本展では作品と共に、その生涯と、没後の作品の行方、作品のみに留まらない小幡が残したものに触れる。
小原美鶴(おはら・みつる)
1949年生まれ。京都府在住。所属:社会福祉法人みずなぎ学園みずなぎ鹿原学園
幼少期より手芸が好きだった小原美鶴は、刺繍を用いた授産品を多く製作しているみずなぎ鹿原学園に17年前から通い、学園で過ごすほとんどの時間を、刺繍の制作に充ててきた。小原の制作は、自ら糸を購入するところから始まり、図柄やモチーフに悩むことなく進む。大きな作品では3ヶ月ほどかけて作られ、好きな色をふんだんに使い、作品ごとにこだわりと愛着を持って制作している。そして、小原は刺繍が商品になり誰かの手に届くことは嬉しいことだと、はにかみながら語る。
似里力(にさと・ちから)
1968年生まれ。岩手県在住。所属:社会福祉法人光林会 るんびにい美術館
岩手県で生まれ育った似里力は、るんびにい美術館内の「アトリエまゆ~ら」に通っている。施設内で草木染の製 品を製造する仕事のうち、糸を巻き取る作業を担当していた似里は、次第に切れた糸を結ぶという行為に興味を 持つようになり、2009年からは自ら糸を切って結んだ糸玉を制作するようになる。1年に1個ほどの制作のペースだったが、制作工程を工夫することで、現在は3ヶ月にひとつほどのペースで生み出されるようになった。
西澤彰(にしざわ・あきら)
1969年生まれ。群馬県在住。所属:社会福祉法人館邑会 陽光園
群馬県館林市にあった今はなき飛行場の側で生まれた西澤彰は、幼い頃から飛行機が飛び立つ様子を眺めながら育ち、記憶の中にある飛行機の風景を描き始める。 絵の中には、飛行機に描かれたロゴやその時々の飛行機の影までも克明に描かれている。また、美術家である長重之(1935 – 2019)と交流があり、長の作品の素材として扱わ れることの多い帆布に西澤の作品195点を貼り付けた「飛行機との対話」と題された作品もある。
泰野良夫(はたの・よしお)
1935年生まれ、2007年没。群馬県。
秦野良夫は幼い頃に住んでいた家の中の様子を、記憶をもとに色鉛筆で紙に描いていた。画中の室内には家具以外にもさまざまな物が置かれており、当時行われていた絹糸製造のための道具のほか、用途のわからない物も多 くある。また絵の中には複数の消失点が混在しており、それが秦野の作品に独特の浮遊感をもたらしている。本 展では代表作である、一つの部屋をさまざまな角度から描いた「家の記憶」シリーズを中心に、秦野の様々な表現を紹介する。
三原巌(みはら・いわお)
1932年生まれ、2021年没。京都府。
大阪で生まれた三原巌は聴覚障害があり、視覚からの映像で記憶することに注力し育った。京都市で生活を営み、仕事を退職した2001年頃から自身の記憶をもとにした絵の制作を始める。そこには第二次世界大戦中の描写が多くあり、戦時下の日常生活を描いたものもあれば、大阪大空襲の実体験を生々しく伝えるものもある。晩年は制作した絵を持って様々な場所に赴き、戦争体験を語り継ぐ活動を行なっていた。本展は、三原の作品を一堂に展示する貴重な機会となる。
森川大輔(もりかわ・だいすけ)
1987年生まれ。京都府在住。所属:社会福祉法人松花苑 みずのき
森川大輔は亀岡市のみずのき内にあるアトリエで、図鑑やカタログを元にアクリル絵具を用いて絵を描いている。着彩が一段落すると、絵の具が残ったパレットを手に持ち、同施設内に架かる小さな橋へと向かい、欄干の塗装 が剥がれた箇所を補修するかのように着彩を施す。週に一度のアトリエ活動の際に、10年近く継続している森川 のこの行為によって、現在も橋は彩られた姿を保っている。
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