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『地下宮殿の遺宝中国河北省定州北宋塔基出土文物展』1997 2008.04.29更新
河北省定州市は、北方草原地帯から華北平野に南下する要路にあたり、古代より発達し、戦国~漢代は中山国の都として華北一帯にその雄を誇りました。また未代、定州市近交「に位置する定窯は、白磁の名窯としてすばらしい磁器を造りだしました。さらにこの地域は、絹織物・大理石工業などが発達したゆたかな土地としても知られています。
1969年、定州市の二つの北宋時代の塔の地宮の発掘が行われ、金器・銀器・銅器・玉器・陶磁器など約800点余りのすばらしい文物が出土しました。一つは静志寺塔(大平興国2年=977年創建)、一つは浄衆院塔(至道元年=995年創建)の二つの塔の地宮で、現在、塔は消失して残っていません。地宮は塔の地下に設けられた宮殿であり、塔を建立するにあたり、熱心な仏教信者がさまざまな財宝を寄進し、地宮の中に埋納したのです。両塔の地宮の四壁は極彩色で彩られた仏画で飾られ、千年を経た今もあざやかにその彩色をとどめています。文化大革命の最中という厳しい状況の中で、定州市博物館を中心に科学的な発掘が行われました。二つの地宮の中から、当時のままのほぼ完全な姿で発見された、数々のすばらしい金・銀器や定窯白磁は、中国のみならず、世界の中国美術史家たちを驚かせました。その報告は、文革後復刊された『文物』誌上で行われ、その全容を知りたいという思いは、中国美術に関心をもつ人々すべての願いでした。部分的には何度か中国文物展で紹介されたことがありますが、今回のように、まとまって公開されるのは中国国外では初めてのことです。出品されるものが年代の明らかな作品であることが重要であることは言うまでもありません。それ以上に、この地宮から発見された金・銀器や定窯白磁は、北宋初期の遺品として、類を見ないすばらしい作品であり、伝世品の中にはほとんど見られないものばかりです。当時の中国工芸技術の粋を集めた作品であり、またそれを惜しみなく地宮に寄進した人々の仏教への熱烈な信仰の強さをうかがうことができます。
この意義深い展観のためにとくに御尽力いただきました中華人民共和国国家文物管理局、河北省文物管理局、定州市人民政府、定州市文化局、定州市博物館に深く感謝いたしますとともに、この展観が未代工芸美術の研究の発達にいささかなりとも寄与することができれば幸いです。さらに、日本・中国の研究者の交流の深まりがなお一層強くなることを切に願います。
平成9年10月
出光美術館
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