考古用語辞典 A-Words

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執金剛・金剛法 2009年10月9日更新

執金剛・金剛法

【和:
【中:
面白テーマ|彫刻・書画|>執金剛・金剛法

西チベット、グゲ地方
15世紀中期
綿布着色
89×74.5cm
マイケル・マコーミック・コレクション
この作品はこの主題を描くほとんど唯一のものである。ここにあらわされているのはおそらくゴルチェン・クンガ・サンポ(1383-1457)個人における、サキャ派の無上瑜伽タントラにおける父タントラと母タントラの系統の統合なのである。画面中央上部に説法する姿であらわされる像主の不明な高僧像がゴルチェン・クンガ・サンポに当たると考えられ、左脇には頭部がインド水牛で二臂暗青色のヤマーンタカが独尊であらわされ、右脇にはヤマーンタカ父母があらわされている(ヤマーンタカは父タントラと母タントラの要素を混合させた仏の原型と考えられている)。この絵が伝えようとしていることは、夢幻的なリアリティにおいては、このラマが、左側に位置する暗青色の執金剛仏尊者即ち秘密集会やヤマーンタカなどと同様な父タントラの主要な仏であると同時に、右側に位置する赤色の金剛法仏尊者即ちチャクラサンヴァラやヴァジュラヨーギニーなどと同様な母タントラの主要な仏でもあるということである。執金剛はその象徴である金剛杵と金剛鈴を持ち、金剛法はダマルと呼ばれる手鼓、髑髏杯、三叉戟状の先端があるカトヴァンガ杖を持っている。ラマの頭部と同じ高さで左右にある、他より少し大きめの円相内には、右にチャクラサンヴァラ父母、左にヘーヴァジュラ父母が描かれている(ヘーヴァジュラは通常は明白に母タントラに関係するものだが、ここでは明らかに父タントラに関係している)。画面最上部にある像の列は左から右へ、サキャ・パンディタ、クンチョク・ギャルポ、サチェン・クンガ・ニンポ、ソナム・ツェモ、大成就者ヴィルーパ、執金剛、金剛無我女、サラハ、龍樹、ルーイーパ、ナーローパの順に並んでいる。画面左端の像の列は祖師やラマたち、右端の像の列は上からガンターパ、カーンハパーにはじまる9人の成就者たちが並び、画面下端の2列にはラマや成就者、護法尊たちに加えて、ラマと彼に供物を捧げる俗人の信徒たちの細雨がある。
 西チベットよりもたらされたトゥッチのタンカ群から浮かび上がってくる、グゲ・ルネサンス・スタイルに属するこの種のもののなかでは、これは最も重要な絵画のひとつである。 15世紀第3四半期頃制作されたツァパランの紅の寺にある壁画同様、これはトゥッチのタンカ群のなかのこの種のものより、様式的に先行する時代のものである。 ラマのスタイルは、15世紀中期から後半頃のチベット中央部におけるサキャ派絵画の流れに従っており、このことはこのエレガントで貴族的なスタイルの起源となった地域、そしてグゲリレネサンスのグループで最も制作期のさかのぼるもののひとつと考えられ、サキャ派と関係があるこのタンカ、それ自体の起源となった地域についての、興味深い問題点を提起する。ラマと彼に供物を捧げる信徒たちの細画のなかの女性信者がつける明るい緑がかった青色のビーズでできた髪飾は、グゲ・ルネサンスの絵画にも同じスタイルのものが見いだせる。台座や壁龕のデザインは、15世紀のチベット中央部の絵画ではよく見られるものだが、柱や唐草文様の奇抜なほどの精巧さには、やや特異さも認められる。色彩はきわめて抑制されたものであり、暗い青と緑、濃淡の赤と朱を中心に用いられている。この絵よりはやや粗野な色調ではあるが、西チベットにおけるグゲ・ルネサンス・グループに属する絵画に、この色彩の特徴が最もよく見いだされる。出所:天空の秘宝チベット密教美術展
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