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ミラレパ・その生涯 2009年10月17日更新

ミラレパ・その生涯

【和:
【中:
面白テーマ|彫刻・書画|>ミラレパ・その生涯

東チベット
18世紀後期一19世紀前期
綿布着色
83.5×55.5cm
ストックホルム国立民族学博物館
この精巧で優美な絵画は、1930年に北京でスヴェン・ヘディン探検隊によって得られた有名なミラレパ伝を描いたタンカ19点のうちのひとつである。この―具は「ミラレパ伝」と「ミラレパ歌集」に記された伝記の詳細な部分を描いたものである。これはチベットの伝記絵の主流をなす様式のひとつの到達点をあらわしている。この様式では、ラマや祖師が中央に大きく重要な尊像として描かれ、その周囲にその人物の生涯のいくつかの説明的な場面を風景のなかに配置するものである。
 このタンカは、ミラレパ伝19点中の3番目の絵にあたる。ミラレパは木の葉で作られた庵の前に禅定印を組んで座る。ミラレパの白い衣は金彩の花文が施され、衣は精緻で流動的な線でミラレパの完璧なプロポーションの体にかかる。顔は、非常に理想的で誇張された美しさでもって描かれている。線や色の質は、画面全体を現実をこえた世界にする効果を持っている。しかし、人物の生き生きとした動きやミラレパの周囲を囲むそれぞれの場面を見事に叙述した細部は、様式の理想的な面を妨げ、現実にもとづくところを残している。これは、仏教美術の一定の原則を反映している。教え自体のように、この世界を見捨てはしないがそれと妨げなく関わろうとしている。
 それぞれの場面は、はっきりと分けられ、出来事が流れるようなリズムをもって展開する。一般的に、物語は、左下から始まり上の方へと進む構成になっている。この場面については、トニー・シュミットによる基礎研究によって解明されているように、ミラレパが仏教の修行に入る前の時代を描いたものである。ミラレパの父は、彼が7歳の時に死に、母とその2人の子は、遺産を欲深い叔父夫婦にだまし取られてしまった。ついに、ミラレパの母は、復讐のため、彼に黒魔術を学ばせた。ミラレパは、魔術に成功し、タンカの右端に見られるように、叔父の息子の婚礼の祝宴の時に、その家を破壊した。彼は、魔術で蠍を呼びだして、馬をおびえさせ柱を蹴らせて家を崩壊させ、家族のほとんどを殺した。村人がミラレパの母を脅していると、彼は雹を降らせて叔父の土地を荒らした。物語は、ここでは二つの場面であらわされる。ミラレパは、左下の小さな部屋で魔術を行っている。そして、右上で、魔術による雹が降っている。ミラレパと友人は近くの洞窟から雹の降る様子を見に行く。ところが、怒った村人に見つかってしまい、腕を振り上げてミラレパを捕まえようとしている。このような黒魔術を使ったことを後にミラレパは悔いることになる。地獄において罰を受けるであろうと確信した彼は、固い決意のもと魂の導きを求めた。そして、彼は最初の師である大訳経官マルパに出会い、修行にすべてを捧げた。
 人物や背景、建物は、物語を作り出す道具として自由に織りまぜられている。緑やピンクの雲や、輪郭を金彩でとった青や緑の土坡、樹木によってそれぞれの場面が区切られている。単純だが色とりどりの建築と諧調のある彩色によって広々とした情景の陰影のない平面を作り出している。流れるような叙情的な線の美しさ、明るい澄んだ色の現実性と、人物や背景との調和のとれた配置は、美しく統合され、作品の様式を特徴づけている。出所:天空の秘宝チベット密教美術展
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