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咸陽市博物館 2010年4月2日更新

咸陽市博物館

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研究機関|>咸陽市博物館

 「咸陽」は秦王朝の都の所在地であり,秦孝公十二年(B,C. 350年)から秦王朝の滅亡(B.C. 207年)まで,144年間にわたり,咸陽に都がおかれ政治がとられていた。秦の始皇帝が六国を統一した後,咸陽は秦王朝の政治,経済,文化活動の中心となった。奏の高祖劉邦は秦末期の農民大蜂起を基礎とし,改めて統一を完成させ,前奏王朝を樹立した。そして渭水の南に漢の長安城を建てた。したがって,秦漢時代の文物は大変豊富で,文化遺跡と古墓葬が咸陽平野のいたるところに散在している。
 1962年,咸陽孔子廟の旧跡に咸陽市博物館が建てられ,陝西省の主な観光名所の一つとなっている。陳列面積は,800平方メートルで,展示文物は3,000件余り,歴史文物展示とテーマ別による展示の2つの部分がある。  歴史文物展示には4つの展示室がある。1室から3室は,秦代の歴史文物が展示されており,例えば,鉄製生産工具,青銅武器,度量衡,貨幣,宮殿建築の遺跡など,秦の孝公から始皇帝が統一を完成させるまでの業績を直接,実物をもって示している。
 展示されている透し彫りのある陶豆,大鴨蛋陶壺及び冷蔵設備をもつ陶窑穴,井戸,五角水道,滲井漏斗などは形が大きく,精巧なものである。これは,咸陽の建設が,かなり大規模であったことを示している。又,最初の考古学調査で発見された,錦,絹,綺(平地の綾)など絹織物の模様は,漸新で華麗であり,秦代の紡織業の研究にとって重要な実物資料である。金銀象嵌の燭台,夔龍紋銅鏡などは,秦代の工芸がすでにかなり高いレベルに達していたことを物語っている。特に,1966年,咸陽塔児坡遺跡で出土した「安邑下官鐘」は歴史的価値が大変大きく,泰代の商鞅変法による度量衡の統一措置として,標準計器を公に設けたことを実証するものである。また,これは文字の変遷を研究するための重要な資料でもある。
 咸陽1号宮殿遺跡は,咸陽宮建築群のうちの高台建築遺跡の1つである。建築全体は主従がはっきりしていて,殿堂,通りぬけの広間,居間,廻廊,倉庫と穴倉などの部分からなっている。それぞれの建築は使用と機能の面で通路,採光,排水などに気を配り,かなり合理的な配置がなされている。これはわが国の建築史上,はじめての発見である。
 秦宮1号遺跡から,陶文259個体,84種が出土した。これは秦代に小篆をおし広め隷書の普及に力を入れていたことの証拠である。これらの陶文はあきらかに,陶工が印したものであり,この「物勒工名(製品には工匠の名を入れるべし)」の制度は,秦の法治精神の手工業生産の分野における表われである。陶文は,わが国の文字の変遷,隷書の発生,秦治皇帝の「書同文」前後の文字改革,及び手工業管理制度などを研究するのに重要な資料を提供している。又,華麗でおごそかな秦代壁画は項羽の破壊によって多くは残片になってしまったが,色彩は黒色を主とし,多くは鉱物質の顔料を使っていて,絵画芸術の特色が知られる。
 第4展示室は,前秦の文物が展示されている。そのなかにみられる鉄すき,鉄鋤(くわ)は,食糧,食糧倉庫がそうであるように,漢の初期の重農抑商という政策によって,前漢の農業生産が,わが国におけるはじめての大隆盛期を迎えたことを物語ってくれる。農業の繁栄にともない,牧畜業も大変盛んになった。このことは,展示物の中に陶牛,陶豚,陶羊などがあることからもわかる。五銖銭は前奏時代に,全国で通用していた。これは郡国による個々の貨幣の私鋳を禁じ,造幣権を中央に帰し,貨幣の再統一を実施したからである。
 鉄長剣,鉄柄刀の普及,発射器つき銅弩,及び敵の騎兵に対抗するための銅馬刺は,中央集権制を強化し,匈奴貴族の侵犯を防衛,反攻し,民衆の生活を安定させるのに大きな役割を果たした。
 2つのテーマ別による展示室に展示してあるのは楊家湾漢墓従葬坑から出土した加彩陶俑と騎馬俑である。楊家湾奏墓は規模が宏大であり,地下につくられたで楼閣式建築で,漢高祖劉邦の長陵の賠葬墓の一つである。出土した陶俑,陶騎馬俑は約3,000件余りであり,「三千人馬」と呼ばれている。これらの俑と馬は,それぞれ10ケ所の坑内に配列されており,前の6つの坑には騎馬俑,後の4つの坑には陶俑があった。騎馬俑は大,小の別があり,色は,赤黒色や黄紫色などで,馬の姿態は静立しているものあり,頭をもち上げて,いなないているものもある。臀部,尾部あるいは馬俑の背中には,さまざまな数字と記号が刻まれている。陶俑も大,小2種類あり,多くは武士で,文官,楽舞,雑役の陶俑もある。そのうち指揮俑は,僅か一件のみであったが,華麗な色をしており,奇異な姿態のあまり例のない珍しいものである。これらはみな前奏の政治,軍事を研究するための重要な資料である。「参考資料」『中国唐俑の美』
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