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ブールデル美術館(フランス) 2009年7月14日更新
【和:ブールデルびじゅつかん】 |
【英:Musee Bourdelle】 |
研究機関|>ブールデル美術館(フランス) |
ブールデル美術館は、パリ十四区のアントワーヌ・ブールデル通りにある。モンパルナスの近くにありながら、静かなたたずまいをみせている。鉄柵の塀越しに「アルデュアル将軍」など庭に置かれているいくつかの彫刻が見える。その庭をとりまく赤煉瓦の二階建ての建物が美術館である。
この美術館には、ブールデルが二十二歳から三十四年間使っていたアトリエ兼居間と、その隣りに一九一九年から一九二九年に没するまで使ったアトリエがそのまま残され、彼の作品が展示されている。ここはブールデルばかりでなく、カリエールらも使用した、当時の芸術家たちがよく集まったアトリエ・アパートだった。 一九二〇年にブールデルの遺族が経済上の理由で維持しきれなくなり、売りに出された。その後、 一九四九年に市立美術館となり一般公開された。そして、 一九六一年には生誕百年記念として大ホールが増築され、美術館としての形態も整えられた。
ブールデルは、 一八六一年に南仏のモントーバンに生まれた。ここは、画家アングルが生まれた町でもある。父は家具職人でブールデルも小さなころから造形に興味をもって育った。 一八八四年にパリに出て国立美術学校に通い、 一八九二年にはロダンの助手となり、その七年後には『君は私を超えた』とロダンを感嘆させている。
鉄の門を入ると左手の庭が一面の落ち葉に埋まり、「弓をひくヘラクレス」(一九〇九)、「りんごを持つヴィーナス」などの連作が置かれている。 左手にあるのが生誕百年記念の大ホールである。中に入ると壁にはマルセイユのオペラ・ハウスの大レリーフが飾られている。その左の部屋にはブロンズ像が二十数体置かれ、ガラスケースの中には小品がたくさん並べられている。一九一九年から使用したアトリエには、彼が好んで買い集めたゴシック様式の家具が置かれていた.大理石のトルソーやアルカイックの古代彫刻も買い集めたものらしい。ほこりまみれのような部屋にいろいろなものがあったが、ストーブの横に日本の甲胃があってそれが眼に入ったとたん、急にこの雑多な部屋が親しみやすいものに思えた。と同時に、ブールデルの趣味の広さに驚いたりした。この建物の右側に入口があり、そこが正式な美術館の入口なのだろう。その奥の広い廊下のような部屋には、馬の小品ばかり並べてあった。これらは、「アルブェアル将軍騎馬像」の馬のための習作であろう。
次に続く部屋は、横に何室もつながっていて、やはり昔はアトリエ・アパートとして使われていたと思われる。二番目の部屋に、「ベートーベン」シリーズの作品ばかりが展示されている。 一八八八年ごろから死の年までブールデルはベートーベンの顔の連作を制作している。 一番奥の部屋には中央に二メートル大の「ラ・フランス」が置かれ、壁のガラスケースにはミニアチュールばかり二十数体飾られてあった。これらの部屋には、三、四点ずつブールデルの絵も飾られていたが、その中でパステル画などは特に色もタッチも優しく、記念像制作のブールデルのイメージとは違った印象を与える。
昔のアトリエ兼居間には暖炉があり、昔のままの家具が置かれ、その奥に食堂と小さな台所があり、ベッドも置かれている。トルストイの肖像画や父親の肖像画などが掛けられている。
一裏には細長く「サッフォー」や「ラ・フランス」など大きな作品が飾られている。ブールデルの作品のすべてと彼の愛したアトリエが今、ひっそりと訪れる人を待っている。ここは何度訪れても飽きることはないだろう。こんなに豊富な内容をもった一人の作家の美術館は少ないからである。出所:『美術館へ行こう』長谷川智恵子
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