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サン・ドニ美術館とシャペル・フジタ(フランス) 2009年7月16日更新
【和:サン・ドニびじゅつかんとシャペル・フジタ】 |
【英: Musee des Beaux‐Arts de Reims】 |
研究機関|>サン・ドニ美術館とシャペル・フジタ(フランス) |
パリから北東に向かって、高速道路を一時間ほど走ると、ランスという町に着く。紀元前五十年ごろにジュリアス・シーザーが東方遠征の途中に見つけた町といわれている。この町は北はベルギーから北海へ、また東はフランスのストラスブールからスイスに向かい、西は英国との領海に至る各地への要所であり、交通の発達と共に急速に大きくなった町である。高速道路からおりるとすぐランスの教会の高い塔が見える。目指すサン・ドニ美術館はすぐに見つかった。
サン・ドニ美術館は一七九五年に設立された町立の美術館で、一九一三年にサン・ドニ修道院の建物に移され、現在のサン・ドニ美術館となった。門を入ると、広い中庭をぐるりと囲む形で建物が建っている。
一階のいくつかの部屋には、ランス出身の画家の絵とフランス各地の陶器が並べてある。
二階は広く使われていて、十数室に絵が展示されていた。貴婦人の肖像画の部屋、タピスリーの部屋などを通ると、カミーユ・コローの部屋へ出る。小品から十五号ぐらいまでの作品が二五点ある。コローの風景画ばかりを一堂に集めたのは珍しい。面白かったのは、ここに数点きちんとした説明付きのコローの贋作が並べられていたことである。説明文を読まずに見ると、コローの作品と間違える人も多いかもしれない。
次の部屋には、ミレーの肖像画や風景画があった。その他の部屋には、十九世紀の印象派より少し前の作品、クールベ、ドーミエ、ドービニーなどが、またカリエール、ヨンキント、ブータン、モネ、シスレー、ゴーギャン、ピサロ、シャバンヌの作品も並んでいる。
最後の部屋には、フジタの「聖母子像」、ボナール、マルケ、マチス、デュフィ、ヴュイヤールなどがある。
どの部屋にも、田舎町の美術館らしく、ベッド、机、椅子などの古い調度品や陶器が一緒に置かれて、美術館というより博物館に近い感じである。
ランスの町の駅から少し行ったところに、シャベル・フジタ(フジタの礼拝堂)がある。一九六四年に藤田嗣治の設計で建てられた建物で、礼拝堂の中は周囲がぐるりとキリストをテーマとしたフレスコ画で飾られ、ステンド・グラスもフジタの作品である。入口側の壁画が「キリスト傑刑図」で、注意してみると、正面の聖母マリアを中心に図の右側に折るフジタ自身と君代夫人の姿を見つけることができる。可愛い小さな礼拝堂だが、卓抜な描写力と品のよい色合いはフジタ芸術の結晶ともいえるものである。この一面の壁画は、他人の手助けを一切断って君代夫人を助手に、フジタ自身が描いたものであり、ニカ月で描きあげたという。そして、その無理がたたってフジタはこの礼拝堂の壁画の完成から数カ月して病床に臥し、一九六八年スイスの病院で八十二歳の生涯を閉じた。それだけに、この凄まじいまでの迫力をもった壁画は見る人の眼を釘付けにするのである。町の喧噪から離れて建っているのもフジタをしのぶにふさわしい。 また、この町はシャンペンの産地として、世界的に人気が高まっている。出所:『美術館へ行こう』長谷川智恵子
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