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ウンターリンデン美術館(フランス) 2009年7月16日更新
【和:ウンターリンデンびじゅつかん】 |
【英:Musee d'Unterlinden】 |
研究機関|>ウンターリンデン美術館(フランス) |
コルマールのウンターリンデン美術館はパリから西へ五百キロあまり、ドイツ国境に近いところに位置している。十三世紀に二人の貴族の未亡人によって造られた僧院は「菩提樹の下」という意味で「ウンターリンデン」と名付けられた。回廊形になっていて、真ん中に中庭がある。一階、二階と地下に展示室があり、祭壇画のある部屋は昔の聖堂なのであろう、吹き抜けになった細長い部屋である。
グリューネヴァルトは一四七〇年から七五年ごろの間にドイツのヴュルツブルグに生まれた画家で、本名はマティス・ナイトハルトあるいはゴートハルトであっただろうと推定されている。彼はストラスプールの銅版画の工房で働いた後、コルマールのショーンガウアーの工房で働き、その後宮廷画家となり、各地の祭壇画を描き、一五二八年、ドイツの農民戦争のさなか、孤独に死んでいる。彼の遺した作品群の中ではコルマールの西二三キロの地にあるイーゼンハイムのアントニウス教団修道院の中央祭壇画として、一五一二年から一五年ごろに描かれた作品が一番有名で、この一作で、世界美術史上に不朽の名をとどめたといわれている。この祭壇画が、現在ウンターリンデン美術館に飾られている。
四五〇年以上も経っているのに、描写も鋭く、驚くほど色が鮮やかである。可動祭壇と呼ばれる形で、閉じたときの横幅ですら三メートルに及ぶ大きなものである。
三重の構造になっていて、現在は三つに分けて展示されている。この部屋には、ショーンガウアーの祭壇画「受胎告知」も置かれていて、ガラスケースの中にはデッサンと版画が三十点ほど飾られている。 二階の、鉄製品が飾られた廊下を通って十三室へ行くと、ここには十六世紀の彩色を施された木彫が飾られている。 隣りの十四室は十九世紀から二十世紀の近年までのおもちやのコレクションで、子供に返ったようで楽しい。 十五、十六室はコルマール近郊の十九世紀からニ十世紀の画家たちの絵が並んでいる。
十七室は豪華なルネッサンス様式の部屋に作られ、十八室は十七世紀から十八世紀のドイツ語圏の典型的な中産階級の部屋であり、十九室はゴシック様式の部屋が作られ、二十室には十六世紀から十七世紀のフランス革命以前のコルマールの家具が置かれている。
二一室は武器のコレクションで、二二、二三室は金、銀製の古い食器や飾りなどがガラスケースに入っている。二四室は十七世紀の美しいピアノが一つ飾られてあり、二五室からニ八室にかけては、古いアルザス地方の意匠や、昔の食器が飾られ、二九室から三三室まではアルザスの木造りのベッドや椅子など、素朴な温かみのある調度品が並べられてあった。
最後の三七、三八室は近代美術の部屋で、ルノワール「レクールの肖像」(一八七〇)の小品、モネ「クルースの谷」(一八八九)、ルオーの初期の作品「東方三博士の礼拝」(一八九四)があり貴重である。ボナール「ノルマンディの風景」(一九ニ〇)ブラック三点、レジェ「青と赤の構成」(一九三五)、ビカソ「仕事をしている画家」(一九六四)、「座る女」(一九六〇)とゲルニカをタビスリーにしたものなどが飾られ、なかではブラックの「パレットと若い娘」(一九一面)が素晴らしい。その他、ニコラ・ド・スクール、ポリヤコフ、ヴァザルリ、デュビュッフェ、マチューなど現代作家の作品も並び、暗い古代の遺跡からタイムマシーンで明るい現代に引き戻されたようにまぶしい部屋であった。グリューネヴァルトの祭壇画と、考古学の発掘品だけでも、ここまで訪れる価値は充分にある。出所:『美術館へ行こう』長谷川智恵子
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