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アプタイベルク美術館(ドイツ) 2009年7月24日更新
【和:アプタイベルクびじゅつかん】 |
【英:Stadtisches Museum Abteiberg Monchengladbach】 |
研究機関|>アプタイベルク美術館(ドイツ) |
デュッセルドルフの西方二〇キロに、メンヒェングラートバッハという町がある。ここに風変わりな建築の美術館、市立アプタイベルク美術館がある。この美術館のコレクションは主に現代美術だが、ハンス・ホライン設計の建物そのものも作品といえそうだ。
石の床、白い壁、広い空間に壁の袖が出ていて、多少区切られているだけなので、目標や順序を決めて見ていくという、いつもの私の美術館めぐりの方法は無理である。
一階、二階と地下室が展示場で、外から見ると、美術館の一部に、塔のように高いガラス張りになっているところがあるが、そこは事務室だという。 まず一階に入ると、マルチビジョンの部屋がある。階段を客席にして、赤と黒の強い色彩の部屋になっている。
ウルリッヒ・リックリームの一九七八年作の白い彫刻があり、さらに一九七〇年代から八○年代の写真を使った作品やデッサン類が置かれている。
そこから上ヘのぼる階段と下へおりる階段があり、階上にはパオリーニの真っ白く塗られた「ミーメーシス(模倣)」(一九七六)が天井光の中で異様なたたずまいを見せている。下におりると、デッサンの部屋があり、フォンタナの作品がたくさんあった。
そこから広い空間に出る。デュビュッフェの作品が二点(一九四四・一九四五)ある。 化粧室の前の空間にはマン・レイのポートレイト写真が並んでいる。アンドレ・ブルトン、ポール・エリュアール、アンリ・マチス、マルセル・デュシャン、ル・コルビュジエ、ドラン、ピカソ、ブラック、エルンストなど巨匠たちのポートレイトが興味深い。
広い空間は壁で仕切られていて、さまざまな作品が陳列されている。エリック・ルーシュの一九六九年作のグレーのオブジェがいい。サム・フランシスの一九五六年作のオレンジの構成はすてきである。イヴ・クラインは一九六〇年代の青や金のレリーフが数点置かれていたが、青いレリーフの海の底のような深い色が、単純であるにもかかわらず強烈である。
隣りの部屋は線の画家モレンが六点飾られ、その奥の部屋はティッケンスの白と黒の線の作品が七点、次の部屋は四人ぐらいの画家たちの作品が並び、なかではギュンター・ユッカーの針の芸術「渦巻」が面白かった。ヤーコブ・アガムやヴィクトル・ヴァザルリなど、視覚に訴える作品だけで飾られている空間もあった。ジョセフ・アルバースの作品のある小さな空間もある。
一九一三年から二三年ごろまでのドイツ表現主義の作品だけを飾っているところもある。キルヒナー、オットー・ミュラー、ヘッケルなどが並んでいるが、ヤウレンスキー「青い帽子の女(一九一二)が一番よかった。
現代美術の空間からこの表現主義の空間に入ると、いつもは強烈でなじみにくい表現主義も身近に感じられる。 地下室から一階へ戻ると、大きな空間に石や鉄、ネオン管のオブジェもたくさん置かれている。
奥の方へ行くとジョージ・シーガルのオブジェ人間「机に向かう人」かおる。壁はウォーホルの作品で飾られていた。二階の区切られた部屋へ行くと、ラウシェンバーグのオブジェやコラージュの作品七点を置いた部屋が面白い。トゥオンブリーの部屋には六点飾られており、いたずらっ子のような軽やかさが楽しい。
下へおりると、ヨーゼフ・ボイスの、枯れたばらをつめたオルガンのオブジェ「ピアノ革命」、木枠のガラスケースのオブジェ「置き場」など、いずれも奇抜でびっくりさせられた。
どこをどう通ったのか、よくわからないほど入り組んだ構造の建物である。階段をおりたり、のぼったり、楽しい空間があったり、驚かされたり、子供のころ読んだ『不思議の国のアリス』が想い出される。建物そのものが現代美術的空間であり、床も壁もすべてが作品となじみ合っている。あまり難しいことを考えないで、足のむくまま気のむくままに、美術館の中を散歩するつもりで見て歩いた方が楽しい。出所:『美術館へ行こう』長谷川智恵子
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