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ナショナル・ギヤラリ(イギリス) 2009年7月28日更新
【和:ナショナル・ギヤラリ】 |
【英:The National Gallery】 |
研究機関|>ナショナル・ギヤラリ(イギリス) |
ロンドンのトラファルガー広場に、イギリスが世界に誇るナショナル・ギャラリーがある。一八二四年にメル街百番地に開館し、その後、数多くの寄贈や購入によって急速に充実したコレクションである。一八三八年、現在の場所に建築家ウィルキンスによって石造りの美しい美術館が誕生した。
ロビーは天井からの光に映えて、ゆったりと美しい。石の柱がかつての大英帝国らしい荘重さを感じさせる。右へ行くと四五室でスーラの大作「アニエールの水浴」がある。平和な静けさが漂う。モネ「太鼓橋」がいい。セザンヌが五点並べられていたが「水浴」「りんごとメロンのある静物」「人形を抱く若い娘」といずれも素晴らしい。
ルドンのパステル画「花とオフェリア」がきれい。ブラックやピカソの作品もあり、また、ルソー「虎のいる熱帯の嵐」が印象的である。ルソーとしてはジャングルのシリーズの中でも動きのある絵で珍しいものである。四六室にはピカソが二十数点飾られている。すべてが名作、息づまるほどである。「カフェ・コンセールで」(一九〇二)は小品だがとてもいい。「ギターとアルルカン」(一九一六)も私は好きである。セザンヌ「サント・ヴィクトワール山」「自画像」も素晴らしい。ゴッホは「椅子とパイプ(ゴッホの椅子)」「ひまわり」「麦畑と糸杉」と力強い作品が並ぶ。
続く部屋は、一八世紀以降のフランス絵画で、なかでもシャルダン「若い家庭教師」の表情がいい。三六室から三八室にはゲインズボローなど英国を代表する作家たちが並んでいる。三五室にはターナーがある。三二、三四室は一六〇〇年以降のイタリア絵画、ティントレットやカナレットである。四一室にはスペインのムリーリョ、ベラスケスがある。ベラスケスは「マルタとマリアの家のキリスト」の構図が面白く、「鏡を見るヴィーナス」は無類の美しさである。「フェリーペ四世」はベラスケスの特色のある肖像画である。ムリーリョは「自画像」「二つの三位一体」など素晴らしい。四二室にはゴヤがあり「アンドレの肖像」など描写の鋭さが光る。
二六室と二七室にはレンブラントが十八点飾られていた。「六十三歳の自画像」「水浴する女」「フローラを装うサスキア」「ベルシャザルの祝宴」が印象に残った。十九室のフランス・ハルス「骸骨を持つ若い男」もいい。二十室と二二室にはルーベンスが多く、ふくよかな女性像に特徴がある。「ジュザンヌ・フールマンの肖像」(一六二二頃)は美しい。
五室から十四室はイタリア絵画である。ミケランジェロ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ラファエロなど名作が続く。十六室のフェルメール「ヴァージナルの前に立つ若い女」と「ヴァージナルの前に座る若い女」の二点が、不思議な魅力をもって追ってくる。
地下へ行くとフランス絵画がある。ルノワール「雨傘」、モネ「サン・ラザール駅」、マネ「ジョッキを運ぶ女」、アングル「モワテシエ夫人」(一八五六)、ドガ「エレン・ルアー」と、どれも名品である。レオナルド・ダ・ヴィンチの「洗礼者ヨハネ、聖アンナと聖母子」の画稿も興味深い。聖アンナの右横に不似合いな人差し指を上につきだした手がある。これは謎のままである。 ロビーヘ戻るところにミュージアム・ショップがある。
出口への通路のせいか、誰もが何か買いたくなるらしく、とても盛況であった。美術館として建てられただけに天井も高く、天井光が入り、作品の見やすい空間になっている。五十数室あるので、あらかじめ目標を決めた方がいい。そうでないと時間切れでせっかくの名作に会わずじまいということも起きうる。さすが大英帝国、イギリスの歴史の重みを感じさせる、そんな美術館である。出所:『美術館へ行こう』長谷川智恵子
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