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コートールド美術館(イギリス) 2009年7月29日更新
【和:コートールドびじゅつかん】 |
【英:Courtauld lnstitute Galleries】 |
研究機関|>コートールド美術館(イギリス) |
ロンドン大学のコートールド美術館がサマーセット・ハウスに移転した。サミュエル・コートールドは十七世紀末にフランスから移住してきた富豪の家に生まれた。当時は銀加工で財をなしたが、十九世紀になり絹織物の会社を興し大きな成功を収めた。一九二三年にはすでに巨費を投じて印象派と後期印象派の名作を購入している。コートールドの美術への深い造詣はその母方の影響によるという。その眼力の確かさは尊敬と敬服に値する。コートールドは自分の集めた一点一点を愛情をもって大切にしてきた。一九三一年、そのコレクションをもとにロンドン大学に付属する美術財団が設立され、一九五八年には美術館として公開された。しかし私が最初、訪れたときも驚いたのだが、あまりに手狭で美術館といえるスペースではなく、大勢の人の入館が難しい状態であった。移転が考えられたのは当然の成り行きであった。
サマーセット・ハウスはこぢんまりとしたクラシックな美しい建物である。人目を入ると小さなエントランス・ホールで右側に売店がある。そこからすぐに二階へ行く。
一室はドイツ・ルネッサンスでクラナッハ(父)「アダムとイヴ」がある。二室はルーベンスが多い。カラバッジョ、ロレンツォ・ロットなども飾られている。三室もルーベンスがたくさんある。四室はティエポロと十八世紀イタリア絵画である。
五室と六室が待望の印象派と後期印象派になる。有名なマネ「フォリー・ベルジェールのバー」(一八八一~八二)、「草上の昼食」(一八六二年作で左側の男がマネの弟で、右側の男が義弟である)。セザンヌでは「トランプをする男たち」「サント・ヴィクトワール山」がある。そして、十一点にのぼるスーラのコレクションは重要である。「化粧する若い女」(一八八九)はモデルが恋人のマドレーヌであり、うしろの鏡の中には作者の顔が描かれてあったという。しかし発表直前に作者の顔の代わりに花が描きかえられている。そのことはのちにX線写真で判明した。クールベ「ギアの橋」もすてきである。ルノワールー桟敷席」(一八七四)も素晴らしい。ゴッホの「包帯を巻いた自画像」(ゴッホ美術館にパステルの作品がある)は一八八八年の十二月二十四目、ゴーギャンとのケンカ別れで発作的に自分の耳を切り落としたときの作品である。バックに日本の浮世絵が見られるのが面白い。ゴーギャンは「ネヴァ・モア(もはやなし)」(一八九七)が迫力がある。「テ・レリオア(夢)」も人物の周囲に壁画があって面白い。共にタヒチ時代の作品で名品である。ドガ、ピサロ、シスレーもある。ロートレックも二点あり、どちらも洒落ていていい。
三階へ行くと、七室は陶器類、八室は企画展示室、十室にはベン・ニコルソンと抽象絵画、モネの「国会議事堂」があった。九室はロジャー・フライのコレクションがある。十ー室は十四-十五世紀のイタリア、オランダ絵画である。ピーテル・ブリューゲル一世「エジプトヘの逃避」、パルミジャニーノ「聖母子」などがある。
何度訪れてもコレクションの質の高さ、特に印象派と後期印象派から受ける感動が薄らぐことはない。以前より広くなり、照明もよくなった。美術館らしい雰囲気が生まれ、静かな時間を楽しめるのが嬉しい。出所:『美術館へ行こう』長谷川智恵子
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