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メイヤー・ヴァン・デン・ヴェルグ美術館(ベルギー) 2009年7月30日更新
【和:メイヤー・ヴァン・デン・ヴェルグびじゅつかん】 |
【英:Mayer van den Bergh Museum】 |
研究機関|>メイヤー・ヴァン・デン・ヴェルグ美術館(ベルギー) |
アントワープ王立美術館から車で五分くらいのところに、メイヤー・ヴァン・デン・ヴェルグ美術館がある。これはフリッツ・メイヤー・ヴァン・デン・ヴェルグの個人コレクションが美術館となったものである。彼は一八五八年にアントワープに生まれた。父エミールは初め薬品や調味料の会社を経営していたがその後さまざまな仕事に取り組み、事業家としてアントワープで活躍した。
しかし、フリッツ二十一歳のときに父が亡くなり、仕事はフリッツの弟が継いだ。一八九〇年ごろからフリッツの美術品のコレクションが始まる。母親ヘンリエットは常に彼の最大の理解者であった。約十年の間にたくさんの収集をしたが、フリッツは一九〇一年、四十三歳の若さで亡くなった。母親は彼のコレクションを美術館として後世に遺すことに着手し、十六世紀フランドル様式の建物で美術館としての近代的な種々の設備を整えたものを計画した。
一九〇四年、美術館は完成した。ヘンリエットは、自分の死後もこの美術館が運営してゆけるようにと、支援のための組織を作った。一九二〇年の彼女の死後は、アントワープ市も美術館の運営に参加して、一九二四年に一般に公開された。
収蔵作品総数は三〇九八点で、そのうち油彩画が二一○点、彫刻二九三点、デッサン類五五二点、陶器六三九点、家具一八三点があり、このほか二千点にのぼるコインのコレクションもある。
建物は十六世紀のフランドル様式のものなので、内部は古い由緒ある小さな城のようなたたずまいである。窓が小さいので、薄暗く、置かれている骨董品、美術品が歴史の重みと匂いを漂わせている。各部屋はそれほど大きくなく、こぢんまりとしている。古い家具も置かれているので、まるで屋敷をそのまま美術館にしたような雰囲気をもっている。構造も複雑で中二階があったり、段差を多くつけたりと工夫を凝らしている。ここに展示されている骨董美術をつぶさに見るだけでも充分に訪れる価値があると思った。
油彩雨ではルーベンス、ピーテル・ブリュ-ゲルー世がいい。ブリューゲルー世の「狂気のマルゴ」と他の一点は見応えがあった。聖像や彫刻もたくさんあり、一つずつ丹念に見ていくと楽しい。広範囲にわたって自分の好み中心に集めてあり、絵画にしても画家の名前や名声を意識しないで収集しているのが特徴である。ここのコレクションは、一点豪華主義ではなく、建物と展示された美術品とが見事なハーモニーを醸し出している。フリッツ・メイヤー・ヴアン・デン・ヴェルグの熱心な収集にもまして、その母ヘンリエットの息子への愛情がこのコレクションを完成させたともいえそうである。小さいが楽しいひとときを過ごせる美術館である。出所:『美術館へ行こう』長谷川智恵子
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