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ダリ美術館(スペイン) 2009年8月1日更新
【和:ダリびじゅつかん】 |
【英:Teatre‐Museu Dali】 |
研究機関|>ダリ美術館(スペイン) |
ダリ美術館は、彼が生まれてから十七歳までの日々を過ごした、フィゲラスにある。フィゲラスにはパリからバルセロナまで飛行機で一時間半、それから車で二時間ちょっとかかる。汽車の便もある。
ダリ美術館は、一八九四年に劇場として建てられたもので、これを美術館にするためにダリ自身が時の独裁者フランコ将軍にかけあったといわれている。一九七〇年から改築が始まり、一九七四年に「想像美術館」と称する展覧会を開いたのを皮切りにダリの個人美術館が発足した。
美術館の壁にはクロワッサンのオブジェ、屋上には卵が載っている。いかにもダリらしい奇抜さである。案内パンフレットによると、地下一階から四階までがレベル1から5に分けられている。まずは、レベル2である一階から見ていくことにして、ホールを抜けると中庭に出る。少しぐらいのことでは驚かないつもりでいたが、この中庭に、アル・カポネが使ったような黒塗りの古いキャデラックが捨てられているのにはびっくりしてしまった。以前には、ボタンを押すと車の中の噴水から水が出る仕組みになっていたらしく「雨の降る車」と書いてあったが、今はもう錆びついて無用のオブジェになってしまっている。その上にエルンスト・フックスの女神像が組み合わせてある。
その向こうにある舞台がメインホールになっていて、ガラス張りのドームの下に、地中海を眺める夫人のガラを描いた大きな編し絵がある。レンズを通して見るとリンカーンの顔になる。ドームの左横の赤い壁紙に囲まれた部屋には、いくつかのダリの初期から晩年までの作品が並んでいる。大作はなく、中くらいの大きさの作品が多いが、その中でも珍しいダリのキュビスム風の絵「パン」の素描がとてもよかった。また、夫人を描いた「ガラリーナ」や、おどろおどろしい「セックスアピールの亡雲」なども強く印象に残るものであった。
レベル3の二階にあがると、「メイ・ウェスト」の部屋がある。ここは、鼻のようにふくらんだ暖炉や、赤いソファー、壁に掛けてある絵などが、焦点レンズを通すと女優メイ・ウェストの顔になるのだ。中国の王女のミイラが飾られている部屋もある。プラスチックであるはずのミイラが、日本式の屏風に囲まれて寝かされていると、本物そっくりでぞっとするものだった。
レベル4の三階にあがると、その入口が女の子の顔になっていた。この女の子の口を通らなければ三階を見ることができないのだ。三階には、アントニオ・ピショットの作品がたくさん展示されていた。これらの作品は、ダリが夫人のガラと暮らしたフィゲラスから車で一時間ほどのリゾート地、カダケスの海岸の岩からヒントを得たものである。とても優しい色使いで、この絵を見ただけで海にいるような気分になれる。
レベル5の四階は、ダリのプライベート・コレクションが展示してある。エル・グレコやマルセル・デュシャンなど、なかなかのコレクションであった。
一番上まで見たところで、地下一階のレベルーまで戻ることにした。ここには、石で作られたダリのお墓のようなものがあり、まるでダリの魂が眠っているかのようであった。すべてを見終わり、出ようとした最後の最後で、またもやダリに驚かされてしまった。なんと出口が二階の空中庭園にあったのだ。ダリと一緒に変化し、ダリの死後も変化し続けているこの美術館は、遊ぶ楽しさと次への期待をもたせるに充分であった。出所:『美術館へ行こう』長谷川智恵子
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