考古用語辞典 A-Words

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国立ベオグラード美術館(新ユーゴスラビア) 2009年8月3日更新

国立ベオグラード美術館(新ユーゴスラビア)

【和:こくりつベオグラードびじゅつかん
【英:Narodni muzei , Beograd
研究機関|>国立ベオグラード美術館(新ユーゴスラビア)

 新ユーゴスラビアの酋都ベオグラードは、東ローマ帝国時代ローマ人が城壁を白い石で築いたことから、セルビア語の「白い砦」という意味で名付けられたという。
 繁華街の近くの広場の前に国立ベオグラード美術館がある。入口は正面に向かって右側の通りに面している。美術館は一八四四年に設立された。この建物は一九〇三年に銀行として建てられたが、一九三三年に改築され、一九五〇年に現在の場所に移ったものである。
 ロビーは大理石の壁にモザイク・タイルの床で薄暗く、荘厳な感じが漂う。ロビーの横はコンサートのできる空間になっていて、そのまわりに先史時代の出土品がガラスケースに展示されていた。
 中央の階段をのぼると、二階にはフレスコ画やイコンが展示され、ユーゴスラビアの絵画も多く飾られていた。さらに階段をのぼると、そこにもユーゴスラビア絵画があるが、ここには外国の絵画も展示されている。残念ながら、ユーゴスラビア絵画はなじみがないので、外国絵画の展示室に向かう。
 まず、イタリアの十六―十八世紀絵画では、カナレットの「ベニス」、ティントレット、グアルディなどがあり、フランドルの十六ー十八世紀ではルーベンスの「ガルバ皇帝」が光っていた。
 近代フランス絵画が、思っていた以上に充実していたのに驚いた。ルノワールもたくさんあり、「裸婦」「ガブリエル」などの名品からパステル画、小品に至るまで多彩である。ピサロ、シスレー、モネなど印象派の大家の作品も揃っている。ゴーギャンが数点あり、いずれも名品である。ゴッホ、ボナールも数点あり、「朝食」「本を読む若い女」が美しい。ルドンは油絵もデッサンも、注目すべきよい作品であった。その他、ドガ、ルオーもあり、総じてレベルの高い作品群に感激してしまった。
 フオーヴィスム時代の作品も数点あり、色彩も華やかで素晴らしい。フオーヴィスムは野獣派と訳され、一九〇五年にマチス、ブラック、マルケ、ドラン、デュフィ、ヴラマンクらが原色を大胆に用いて、激しいタッチで色彩自体の表現を強調した力強い絵画を生み出した。そのピカソ、一九〇九年の名作「女の顔」は素晴らしいの一言に尽きる。ピカソ二十八歳の作品である。ブラックと知り合い、キュビスムに傾倒していったときである。ピカソのほとばしるような若いエネルギーが感じられる作品である。
 フランス美術のコレクションは展示していないものを含めて、数百点を超えるという。そのうち三百六十点がエリック・スロモビッチのコレクションであった。スロモビッチは、パリの画商ボラールの下で働いていたが、第二次世界大戦中ナチスに殺されるという悲劇的な運命に見舞われた人である。生前、このコレクションを遺贈したいと考えていた彼の遺志を母親が継いで、彼の名前で寄贈しようと計画したが、その母親も一九四四年に列車事故で他界してしまった。結局、文化省が彼の遺志を実現させて、一九四八年、この美術館に彼のコレクションを収めたという隠れたドラマが秘められている。
 もしスロモビッチが寄贈の気持ちを家族に伝えていなかったり、母親が悲劇的な死を遂げた息子に代わって志を実現させようと決心しなかったら、これらの作品がたどる運命は、もっと違ったものになっていたかもしれないと思う。大切な人類の財産を残してくれたスロモビッチとその母親に、心からの感謝を捧げたい。 出所:『美術館へ行こう』長谷川智恵子
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