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フリック美術館(アメリカ) 2009年8月5日更新

フリック美術館(アメリカ)

【和:フリックびじゅつかん
【英:The Frick Collection
研究機関|>フリック美術館(アメリカ)

 ニューヨークのど真ん中、五番街のセントラル・パークに沿った七十丁目に、十八世紀の空間がある。フリック・コレクション(美術館)である。建物も低い三階建てであまり目立たないが、すぐ前がセントラル・パークでビルの谷間という感じはしない。
 この建物は、一九一三年から一四年にかけてレノックス図書館跡にアメリカの建築家トーマス・ハスティングが建てたもので、それぞれの部屋に十八世紀の英国やフランスの様式を採り入れ、インテリアもそれに合わせてある。喧噪なマンハッタンには不釣り合いなほど静かなたたずまいを見せている。
 ここにはピッツバーグの石炭とスチールで成功したヘンリー・クレイ・フリックが住んでいたが、全部のコレクションが家具調度品と共に遺贈された。
 初めはて一三一点たった作品も、その後三八点が買い足され、一九三九年から一般公開されている。この美術館は、『十歳未満の子供お断り、十六歳未満は父兄同伴」となっている。薄暗い石造りの入口を入る。城門をくぐる感じである。 すぐに建物の中心部に出るが、そこは室内庭園になっていて、噴水があり、緑が美しい。人工照明を抑え、天井からの自然光を利用した明るさは、十八世紀の雰囲気にぴったりである。
 各部屋のインテリアに合わせた調度品も優雅さがあふれている。中庭を左へ行くと、最初の部屋はポンパドール夫人のためにブーシェが描いた八枚のパネルで飾られている。ブーシェはルイ十五世に認められ、当時の装飾絵画に大きな影響を与えた画家である。
次に聖画の部屋があり、その向こうに英国の絵画がある。かつては食堂だった部屋である。そこではゲインズボローの「エリオット夫人」の美しい肖像が微笑んでいる。その横の廊下にはブーシェの「四季」という題のバネルがあり、それからフラゴナールの部屋に出る。壁画のシリしス「愛のプロセス」四点が美しい。ここにも十八世紀のフランスの家具があり、過ぎし日の栄華をしのばせる。
 居間に使っていた部屋は、中庭に面しており、ティツィアーノ、エル・グレコらの作品がある。エル・グレコ独特のえんじ色や少し病的な青みがかった肌色を見ていると、グレコという画家はよほど神経質な人たったようだ。
この部屋にはイタリア・ルネッサンス期のブロンズ像や中国の陶器も置かれている。その隣りの細長い部屋にルノワールの「母と子」が掛けられている。向かいの部屋にはアングルの「ドーソンヴィル伯爵夫人」がある。
 図書室だった部屋には十八―十九世紀にかけての英国の肖像画や風景画が掛けられている。ゲインズボロー、レイノルズ、ローレンス、そしてターナーなどである。この部屋には創立者フリックの肖像画も飾られている。 一番大きい部屋にはレンブラントの「自画像」やポーランドの騎士像が並んでいる。オランダが生んだ天才両家レンブラントは同世代の画家の中でもひときわ光彩を放っている。その他アントワープ生まれのヴァン・ダイク、スベインのベラスケス、イタリアのブロンジィーノの大作があり、ヴェロネーゼやゴヤ、イタリア・ルネッサンスの家具が置かれている。さらに奥に進むと、十六世紀リモージュのエマーユ(七宝)の部屋で、ファン・アイクの聖母子像があり、「オパールの間」にはホードンのテラコッタ像「ダイアナ」などが見える。
 最後の部屋に、ゴヤ、ゲインズボロー、ファン・アイクなどが飾られている。中央の中庭を入れて合計十四室の展示場は、美術館というよりは小さな城そのままで、フリックが住んでいたころと少しも変わらない。 二十世紀のあわただしい生活から逃れて、十八世紀の伸びやかで穏やかな世界に戻り、本物の美しさを味わえるひとときがこの美術館にはある。出所:『美術館へ行こう』長谷川智恵子
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