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グッゲンハイム美術館(アメリカ) 2009年8月5日更新
【和:グッゲンハイムびじゅつかん】 |
【英:Solomon R.Guggenheim Museum】 |
研究機関|>グッゲンハイム美術館(アメリカ) |
パイオニアは常に十字架を背負っている。ニューヨークのグッゲンハイム美術館も、建設当初、その常識破りの設計が非難を浴びた。しかし、初めは突飛すぎた建物も次第に美しく周囲に調和して、今では美術の殿堂として訪れる人々を堪能させてくれる。設計者はフランク・ロイド・ライトである。円形の六階建てになっているが、建物の内部は各階に区別されていない。下から上までゆるやかなスロープになっており、人々はいつの間にか二階にいたり三階に来てしまっているのである。天井からの自然光を生かすために、各階が少しずつ上へ向かって広がっている。ゆるやかなカーブは壁面だけでなく、すべての場所がそうであり、余計な装飾がなく外見もモダンで少しの無駄も感じさせない。
創立者ソロモン・グッケンハイムは、十九世紀にスイスからアメリカにやって来て鉱業部門で財をなした名門に生まれ、早くから古典絵画の収集にあたった。一九二八年、ドイツの若い女流画家ヒラ・リベイとの出会いによってコレクションの傾向が一変した。彼女は前衛グループと親しく、またレジェ、シャガール、カンディンスキーらとも親交があり、その関係でグッゲンハイムは彼らの新しい分野の絵を収集するようになった。一九三七年には美術館にするための財団を創ったが、一九四九年に亡くなったため中断したままになっていた。しかし、甥のハリー・フランク・グッゲンハイムにより、一九五九年に念願の美術館がオープンする運びとなった。
コレクションはグッゲンハイムの初期の収集作品に加えて、一九四八年ドイツ絵画のコレクターとして有名なカール・ニーレンドルフのコレクションが入り、ココシュカ、カンディンスキー、クレーなど近代絵画の新しい方向の作品が質量ともに充実し、それにタンハウサーのフランス印象派および後期印象派を中心にしたコレクションとヒラ・リベイのコレクションが加えられた。エレベーターで六階へのぼり、らせん状の展示室へ出る。そこからスロープをさらにのぼると、新しいウイングに出る。このウイングは一九九二年六月に新しくオーフンしたものである。ライトの建築にぶつからないように裏側に造られた長方形の建物である。新しい展示場として各階でライトの建物のスロープにつながっているが、床がフラットなのでスロープよりはるかに作品が見やすい。スロープの場合一つの場所に長く立ち止まりにくいという難点がある。
新ウイングの五階には現代アメリカの作家の作品が並べられている。オルデンバーグ、ジャスパー・ジョーンズ、ジム・ダイン、ラウシェンバーグ、ウオーホル、リキテンシュタインがあった。どれも六〇年代前後の作品が多い。四階はデ・クーニング、フランシス・ベーコン、デュビュッフェ、ケリー、フオンタナ、タビエス、ロスコ、ポロックと誼んていた。三階にはカンディンスキー、クレー、モランディとその時代の傾向の似た画家たちが並んでいるが、ともかくカンディンスキーの名品が素晴らしい。マレーヴィッチやポボワ、ラリオノフなどのロシア人作家たちもいい。続く部屋にミロ、タンギー、エルンストなどシュルレアリストたちの作品が飾られてあった。
さらにおりるとタンハウザー・コレクションである。モシリアニ、レジェ、ブラック、ダリかおるが、ピカソが特に素晴らしい。「アイロンをかける女」「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」が強く印象に残る。スーラも数多くあり、ルノワール、ロートレック、ドガ、マネ、セザンヌ、ゴーギャン、ゴッホと素晴らしいコレクションである。アーチペンコ、レジェのいいものもある。また、ヤウレンスキーやキルヒナーのドイツ表現派も揃っている。いつ見ても、何度見ても楽しませてくれる、定評のあるコレクションである。
ソーホーの別館も磯崎新によって改築され、見やすい展示場となった。館の方針として、タンハウザー・コレクション以外は両館で所蔵品の展示替えをいろいろと考えているそうである.出所:『美術館へ行こう』長谷川智恵子
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