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八-シュホーン美術館と彫刻の庭(アメリカ) 2009年8月6日更新
【和:八-シュホーンびじゅつかんとちょうこくのにわ】 |
【英:Hirshhorn Museum and Sculpture Garden】 |
研究機関|>八-シュホーン美術館と彫刻の庭(アメリカ) |
ワシントンのナショナル・ギャラリーのある広場を挟んだ向かい側にハーシュホーン美術館がある。正確には「ハーシュホーン美術館と彫刻の庭」である。一九七四年に建てられた球場のような円形の建物で、一階は柱と入口だけの空間で、二階、三階が展示室になっている。中央の吹き抜けを中心に円形に展示室が続くので、見学者は自然に一回りできるようになっている。
そのコレクションは主に一八七〇年以降のアメリカ絵画と十九世紀中ごろからのヨーロッパ絵画で、総点数は七千点にも及んでいる。ジョセフ・ハーシュホーンは、一八九九年に貧しい家に生まれたが、株取引で成功して、少年時代からの夢だった美術品のコレクションを実現していった。一九三〇年ごろまでは、モネ、セザンヌ、ドガなどの収集をしていたが、その後より身近な世代、つまり現代絵画と彫刻へと収集の方向が変わっている。
初めは自宅に飾り、そのうちに飾りきれなくなって倉庫を借りたりしたが、一九六二年にはグッゲンハイム美術館で、コレクションの中から四四四点の彫刻の展覧会を開催した。
一九六四年、スミソニアン協会からハーシュホーンに『ワシントンに美術館を建てないか』との申し入れがあり、当時のジョンソン大統領の仲介もあって、一九六六年に建設されることになった。こうして、スミソニアン協会のグループの一つとして運営され、今日に至っている。(スミソニアン協会=一八四六年に文化、科学、歴史の一般的教育の目的で英国の科学者であり鉱物学者でもあるスミソニアンの財団と、アメリカ合衆国議会が協同で設立し、現在十三の国立を含めた美術館や動物園などを経営している。)
門を入ると、すぐに三十数体の彫刻が目に入ってくる。彫刻の庭と呼ばれるにふさわしく、世界各国の有名な作家の素晴らしい作品が林立している。イタリアの巨匠マリノ・マリーニ、ロダンの「カレーの市民」もある。ヘンリー・ムア、マンズー、ジャコメッティ、アレクサンダー・カルダーをはじめとする現代作家の作品も多い。
さらに館内の二階にも、バーバラ・ヘップワースの彫刻が十数点、そしてマチスの小品の彫刻が十点ほどある。マチスの彫刻がまとまって十点もある美術館は珍しい。画家の彫刻ではボナール、ゴーギャンが二点、ルノワールの台座にパリスの審判が彫られた「りんごを持つ女」がある。その他、マイヨール、ブールデル、ロダンの作品が飾られ、メダルド・ロッソの溶けそうな彫刻もいい。
この階のまわりの部屋には、アメリカの現代絵画が並べられているが、中にはジャコメッティ、アレシンスキー、デュビュッフェ、フランシス・ベーコンなどもある。 三階にはムアの大小の作品が多く展示され、アルプのいいものがあったり、レジェがあったりと楽しい彫刻のジャングルになっている。絵画では、サルバドール・ダリ、ホアン・ミロ、マグリット、タンギーらの巨匠をはじめ、作品数が少ないバルテュス、現代美術のポロック、マッソン、マン・レイなど多彩な作品がひしめいている。ピカソの「乳母車の女」が面白いし、マンズーの「枢機卿」もシンプルな造形美が宗数的な厳しさを表している。
この円盤のような美術館は二十世紀美術の宝庫ともいうべき貴重なものである。向かい側のナショナル・ギャラリーで、イタリア・ルネッサンスやフランス印象派の作品を見て、そのあとにここで二十世紀美術を見るのも面白いと思う。ちなみに両美術館ともスミソニアン協会に所属している。
出所:『美術館へ行こう』長谷川智恵子
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