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バーンズ・コレクション(アメリカ) 2009年8月7日更新

バーンズ・コレクション(アメリカ)

【和:バーンズ・コレクション
【英:The Barnes Foundation
研究機関|>バーンズ・コレクション(アメリカ)

 バーンズ・コレクションは、フィラデルフィア近くのメリオンという町にある。アルバート・バーンズの邸宅とコレクションがそのまま公開されたのは、一九二二年の十二月である。
 バーンズは製薬業者として成功した人で、単に作品のコレクションを公開するためでなく、美術教育を本物の作品の前で行いたいというのが美術品収集の目的であった。そのため、金、土、日曜日の決められた時間にあらかじめ予約をとった人だけが見ることができる。月曜日から木曜日には、会員のための美術講座が聞かれているのである。
 ニューヨークから車でちょうど二時間でバーンズ・コレクションに着く。十二万エーカーの土地の中にひっそりと建てられた、閉ざされた個人美術館である。  門番に予約してあることを伝えて中に入れてもらい、小道を歩いていくと、ザッキンの彫刻がはめられた白っぽい建物の前に出る。一階は吹き抜けの広いホールになっている。眼前に窓があり、窓と窓の間にピカソの「農民たち」の大作とマチスの「リフィアン」の大作があり、その上に有名な「ダンス」の壁画がある。描かれてから五十年も経った現在でもなお鮮やかな洒落た彩色は、モダンで見る人をひきつける(バーンズ邸のためにマチスが制作した)。右の壁面には、上段にスーラの珍しい二百号の大作「気取り屋のモデルたち」、下段にセザンヌの百二十号の「トランプをする男たち」が掛けられていた。この一点を見るだけでもここを訪れた甲斐がある。両隣りにセザンヌ、コローなどが三段に掛けられている。左側の壁面はセザンヌの百二十号「水浴する女たち」、ルノワールの大作にティントレット、シャルダン、ドーミエらの作品が飾られている。
 この館は二階建てで、吹き抜けのホールを中心に左右に小部屋が五、六室ずつあるが、片方ずつ一時間四十五分間のみ鑑賞できるという、時間の制限がある。  右側の小部屋から見ていくと、ゴッホの珍しい「裸婦」がある。この部屋にもルノワールが多く二四点もある。ほかに、セザンヌ「少年と骸骨」、マネ「女の子」、ゴッホ「喫煙者」も展示されている。その先の部屋には、楽しいミニアチュールの作品が飾られていて、ピカソの作品だけを年代を追って見ていくだけでも素晴らしい。「青の女」、新古典時代の作品、一九○五年ごろの「アルルカンの少年」、キュビスムの作品、アヴィニヨンの小品という具合である。どの部屋も床は木で、照明もあまり明るくなく落ち着いた雰囲気である。
 二階の踊り場からマチスの「ダンス」がよく見える。ルノワール大小十七点、セザンヌ五点、スーチン三点、ティントレット、クールベ、ルドンなど、二階でたくさんの作品を見ることができる。さらにルソーの「悪い驚き」の大作が素晴らしい。ルノワールの「髪を梳く娼婦」の大作が目に入ってくる。この他にも、ルノワールは十六点を数え、セザンヌは「静物と骸骨」をはじめ十点ある。ゴッホの「郵便配達夫ルーラン」は感動的である。
ルノワール「扇子を持つ女」、ゴーギャンの「タヒチの女」の三十号、スーラの小品「男と女」は逸品である。二階の左側の最初の部屋でまず目に入るのは、ピカソの大作「コメディアンたち」とその反対側にあるマチスの大作の三部作「三姉妹と黒人彫刻」である。ルノワールが合計一八○点、セザンヌが五十数点、マチスが五〇点と、この小さな邸宅は大きな美術館より遥かに豊富な文化遺産を抱えているが、これらのコレクションには、両家の名前だけが額に付けられて、画題札がなく、カタログも絵はがきも売られていない。ただ、バーンズの著したルノワール論、セザンヌ論などの分厚い書物だけが売られているだけである。出所:『美術館へ行こう』長谷川智恵子
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