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フォグ美術館(アメリカ) 2009年8月7日更新
【和:フォグびじゅつかん】 |
【英:Fogg Art Museum】 |
研究機関|>フォグ美術館(アメリカ) |
ボストンの町は、アメリカ新大陸の玄関口だったころの面影を今も色濃く残している。古びた煉瓦造りや石造りの建物が立ち並ぶ街並みは、シックで英国の町を思わせる。この町の西北にハーバード大学で有名なケンブリッヂがあり、世界各国からたくさんの優秀な学生たちが集まって来る。そしてハーバード大学にはフォグ美術館という素晴らしい美術館がある。
外観は地味だが、内部に入るとアーチ形の美しい柱があり、廊下などは古城の華麗さを思わせる。カメラを持っていると、許可なしで撮影しない旨の契約書にサインさせられる。
まず一階を左へ行くと、中国、日本、インドのコレクションが続く。十九世紀の浮世絵や円山応挙、浦上玉堂、他人雅などの日本画がある。入口に戻って右側へ行くと、版画、デッサン、現代美術の作品がある。突き当たりの部屋はやや大きく、シャッセリオー「真珠の首飾り」、アングル「ラファエロとフォルブリナ」、モロー「若い男と死」一が目をひく。アングルの大作「オダリスクと奴隷」などは絶品である。
二階へのぼると、ヨーロッパの十六世紀から十八世紀の作家たちのデッサンがひしめきあっていて、ここでしばらく楽しいひとときを過ごすことができる。廊下には、イタリアの彫刻家ベルニーニの小品が十点ほど並べられ、特に「聖ヒエロニムス」のテラコッタが素晴らしい。
一番奥の部屋はかなり広く、天井からの柔らかい自然光の中に傑作がずらりと並んでいる。まず、ピカソの「子供とうずくまる女」は青の時代の大作である。モネ「サン・ラザール駅」、この絵はモネの色感、構図のよさを一番よく表していると思う。そして、ルノワールの大作「座る裸婦」、ロートレックの「酒飲みの女」も素晴らしい。
ドガ「リハーサル」も油彩で踊り子たちをしっかりと描いた名作である。また、マネ「スケーティング」は期待していたとおりの作品だった。
また、ピカソがキャンバスの両面に描いた作品がガラスケースに入れられて両側から見られるようになっている。それは「帽子をかぶった少女」と「肘をつく女」で、十五号ぐらいの作品だが両面とも素晴らしい名品である。彫刻はマイヨール「ルノワールの肖像」と等身大の「イル・ド・フランス」やドガ「踊り子」「馬」などが置かれている。
これら名作揃いの部屋を出ると、廊下にティエポロやレンブラント、アングルらの作品が飾られている。特にレンブラントの「キリスト像」の小品が強く印象に残った。この美術館は、レンブラントの油絵数点と、たくさんの版画とデッサンのコレクションをもっている。
一八九五年に開館し、一九七三年に建て替えられたこの美術館はたくさんの人たち、特にハーバード入学に縁の深い人たちによる寄贈作品が多い。飾られているのはほんの一部で、この他にも多くの作品を所蔵しており、受付の横の順に作家別に分けられた作品写真のファイルがずらりと並んでいて、来館者に便宜を図っている。ハーバードの学究の町に静かに息づいている名作の数々。煉瓦造りの町に巨匠たちの絵がよく似合う。出所:『美術館へ行こう』長谷川智恵子
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