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メニル・コレクション(アメリカ) 2009年8月12日更新

メニル・コレクション(アメリカ)

【和:メニル・コレクション
【英:The Menil Collection
研究機関|>メニル・コレクション(アメリカ)

 アメリカ合衆国南西部の港町、テキサス州の州部ヒューストンは、アメリカの国威をかけた宇宙開発の基地のある町として全世界に知られているが、このヒューストンに一九八七年の六月、「メニル・コレクション」という名称の美術館が出現した。メニル・コレクションの建物は、外壁が板壁風のタイルで表装され、それもグレーと白に塗り分けられていて簡素な印象を受ける。メニル・コレクションはジョン・デ・メニル、ドミニック・デ・メニル夫妻のコレクションを基礎としたもので、メニルの死後、夫人の手でメニル財団が設立され、さらに他のコレクターからの寄贈作品も加わり、古代から二十世紀に至る一万点余のコレクションができあがった。特にシュルレアリスムのコレクションは素晴らしい。  まず、シュルレアリスムの部屋へと進む。入口のところから薄暗く照明を落としてあり、Surrealismの文字を浮き出しにし、文字通り超現実的な雰囲気を演出している。 キリコの「メランコリー」(一九一六)と「ヘクトールとアンドロマケー」(一九一八)はいい時代の作品である。 この若き日の形而上学的な世界の作品は生き生きとしている。次はマックス・エルンストが「卵の中の生」(一九二九)、「ユークリッド」など十五点あり、「ロプロプがロプロプを差し出す」(一九三〇)、「シュルレアリスムと画家」(一九四二)の大作や「若い人のための絵画」(一九四三)も面白い。「ドミニックの肖像」(一九三四)はドミニック夫人の肖像画である。「昼と夜」(一九四一ー四二)は名品である。  ルネ・マグリットも「夜の感覚」(一九二七)、「暴行」(一九三四)、大きなりんごが部屋一杯にふくらんでいる「盗み聞きの部屋」(一九五二)、「ガラスに密封された風景」(一九五九)など十四点を数える。どの作品を見ても諧謔と物語性があり、見る者を思考の迷路に誘いこむ作品である。ブロンズの「レカミエ夫人」(一九六七)は、ダヴィッドの同名の作品へのオマージュなのか、あるいは彼独特の比喩なのか、全く意味深長な作品である。
壁の絵だけでなく、会場の中央の柱の三方にガラスケースが設けられ、小さなオブジェがたくさん飾られていて、その飾り方が何とも超現実的である。ヴィクトル・ブラウネルは八点あり、童画的な作品だが色彩がとてもきれいで、マグリットの深刻な画面を見たあとではいい息抜きになる。イヴ・タンギーも六点ある。ミロの「ミュージック」(一九三七)は私の好きな作品である。マン・レイの「サド侯爵のイメージの肖像」は、まるでダリの世界をのぞいたようで面白い。そしてシュルレアリスムに関する一九二〇、三十年代当時の図書や同じころの展覧会カタログなどが展示されていて、資料的興趣がわく。
マッタも六点ほどあり、現代のシュルレアリスムという感じである。また、ジョセフ・コーネルの小さなオブジェがたくさん集められているコーナーもある。
 古代彫刻やアフリカ芸術、マヤ文明の遺品、さらにニューギニアやポリネシアのオセアニア美術の展示の奥はニ十世紀美術のコレクションで、現代美術から始まる。イヴ・クライン、ジャスパー・ジョーンズ、トゥオンブリー、ウォーホル、アルマン、ステラ、ラウシェンバーグなど、現代美術の人家たちの作品が揃っている。
 続いて、マチスのコラージュ、ピカソの「頭蓋骨と水差し」(一九四五)、ブラック「パレットのある室内」(一九四一」の大作、クレー「木の人相学」(一九三二)、アンソールの「仮面舞踏会」(一八九〇)は面白い。デュビュッフエ、ポロック、ロスコ、デ・クーニングの作品、そしてフォートリエの一九四〇年代の作品も見ることができた。
 ほぼコレクションの全体を見て回ったが、やはり、シュルレアリスムの部屋が際立って内容が充実している。美術館から歩いて二、三分のところにロスコ・チャペルがあった,このチャペルもメニル夫妻がマーク・ロスコに制作を依頼して造らせたもので、教会といっても、ロスコの黒っぽい絵ばかりが内壁に飾ってあるだけで、祭壇はなく、おごそかな静けさだけが漂っていた。まばらに何人かの人々がじっと座って瞑想にふけっていた。ここではどんな宗教、宗派を抱く人でも自然に祈る姿になれる、そんな教会であった。出所:『美術館へ行こう』長谷川智恵子
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