考古用語辞典 A-Words

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メキシコ・シティー国立人類学博物館(メキシコ)  2009年8月14日更新

メキシコ・シティー国立人類学博物館(メキシコ) 

【和:メキシコ・シティーこくりつじんるいがくはくぶつかん
【英:Museo Nacional de Antropologia
研究機関|>メキシコ・シティー国立人類学博物館(メキシコ) 

 メキシコ・シティーの、ちょうど上野公園のような動物園、遊園地、美術館があるチャプルテペック公園の中に、国立人類学博物館は建っている。美しい森の中の、窓のない近代的な建物がそれである。ロビーの右手にはタマヨの壁画があり、正面の中庭へ出ると、この博物館が中庭を中心に回廊形になっているのがよくわかる。中庭では、きのこ形の上部からシャワーのように水の落ちる噴水がさわやかな風を誘っている。  まず右側の回廊から回っていくことにしよう。一番初めの部屋は「人類学への導き」で、先史時代から近代へのメキシコ固有の文化を概略的に紹介している。物理学的人類学、考古学、言語学、人類学の四部門に分かれ模型や図解などで説明している。  次に「メソ・アメリカ」。プレ・コロンビアの作品や住居の模型がある。続いて、「オリジン(起源)」の部屋で、四万年前に人類がアメリカ大陸に移住したと信じられ、一万二千年前にメキシコに入ったといわれていることなどが説明されている。  「中央高地におけるプレ・クラシック」、この時代の土の人形や壺が発掘されている。紀元前二千年の人形は意外にモダンで愛らしい。この時代すでに彩色がなされていたのは興味深いことである。この部屋あたりからだんだんに照明が暗くなる。  次の部屋は、"神の町"と呼ばれた「テオティアカン」で、紀元後三五〇年から六五〇年ごろのアメリカ・プレ・コロンビアの宗教の中心であった。その後十世紀にわたってアメリカ本土にも影響を与えることになった。  「トルテク(トルテカ族)」の部屋には紀元前六〇〇年から九〇〇年のトーテム・ボールが、薄暗い部屋の中で照明を浴びてそびえている。  この博物館の最大の部屋「メキシカ」はこの博物館の中心にもなっていて、ちょうど入口と向かい合ったところにある。天井も高く荘厳な部屋である。右手にアステカ(メキシコの北の方からの民族)の造った都市の模型がある。農業を土台として発達したアステカは、メキシコ・シティーがまだ巨大な湖の中の島として浮かんでいたころに、大きい宮殿を造り勢力を増大していった。一五二三年にスペイン人によってアステカは滅ぼされ、この湖の水はまわりの山々にトンネルを掘って流され、広大な平野に変えられてしまった。現在もメキシコ・シティーの下にはアステカの文化が眠っている。この部屋にあるアステカのカレンダーとして使われた重さ二四トン、直径三・六メートルの「太陽の石」は見事である。アステカは優れた文明をもち、壷、木彫、石彫、楽器など多方面にわたって活躍していた事実を今に伝えている。  アステカに続いて、「オアハカの文化(オアハカ地方)」「湾岸文化」、そして待望の「マヤ」の部屋となる。プレ・コロンビア文化の中で最も発達したのがこのマヤ文明であるといわれている。その影響はメキシコの南方の広い地域に及んでいる。音楽、宗教、服飾と展示されており興味が尽きない。マヤ人の顔には特徴がある。 額から斜形に偏平になっているのである。これは昔の中国の纒足のように、人工的な美として、生まれた赤ちゃんの順に板を押しつけ変形させた習慣による。  こうしてみてくると、古代文明は決して古びていないことに、改めて驚嘆するのである。明朗でユーモラスであったり、とてもモダンでデフォルメされていたり、見ていて楽しく飽きることがない。機械文明は発達していっても、美術はそれに比例して発達するものではなく、古くても人間の本来性に根ざした美は新鮮で、その美しさは永遠である。  メキシコ・シティーは車も多く、ほこりっぽい印象だったが、この国立人類学博物館は世界の博物館、美術館の中でもその素晴らしさにおいて屈指のものであると思う。コレクションや建物もいいが、展示方法や照明に工夫が凝らしてあり実に素晴らしい。 出所:『美術館へ行こう』長谷川智恵子
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