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サンパウロ美術館(ブラジル) 2009年8月14日更新

サンパウロ美術館(ブラジル)

【和:サンパウロびじゅつかん
【英:Museu de Arte de Sao Paulo,Assis Chateaubriand
研究機関|>サンパウロ美術館(ブラジル)

 サンパウロ美術館の創立者アシス・シャトーブリアンは二十世紀前半から半ばにかけての、ブラジルのジャーナリズムの巨頭で、新聞、ラジオ、テレビを掌中に収めたうえ、上院議員を務め、駐イギリス大使にもなっている。このコレクションはシャトーブリアンがサンパウロを世界的な文化水準に引き上げるために、主に第二次世界大戦直後に集めたものである。名作は、それを愛する人々の努力によって戦火から守られ移動し、戦後の経済のバランスによっても移動する。  美術館はサンパウロのバウリスク大通りの公園の前に建っている。コンクリートの打ちっぱなしで床が高く、二階が入口になっている。一九五七年に計画され、六八年に十年がかりで完成した建物で、横が八十メートル、奥行きが三十メートルの長方形のコンクリートの箱のようである。ここは、上地の傾斜を利用して地下ニ階まで明るい展示場がつくられている。  広いワン・ルームの展示場には六、七十点の絵が飾られ、すべての作品がガラスの板に掛けてあって、その裏に作家の履歴と作品紹介が記されている。嬉しい心配りである。外に面した窓は大きく、外光で充分に見られるように工夫してあり、天井からのライトも蛍光灯ではなく、自然光に近い光である。  まず、セザンヌの「赤い服の女」が目につく。モデルはセザンヌ夫人で、ほかの美術館で水色の服の連作を見ていたせいもあって赤い服を着たセザンヌ夫人像は興味深いものであった。モジリアニの「ココシュカ」「ズボロウスキーの肖像」、ピカソの青の時代の「婦人像」、コローの「マンドリンを弾くジプシー女」、マネ「水浴する女」「芸術家の肖像」、モネ「エプト川での舟遊び」、ゴッホの「中学生カミーユ・ルーラン」どれも名作である。  ロートレックの大作「海岸の将軍」は迫力がある。アングルの作品も二点あった。クールベの「ゼリー・クールベの肖像」、それに有名なレンブラントの「自画像」、ラファエロの「キリストの復活」、ゴヤの「ドン・アントニオ・ルロレンテの肖像」、メムリンク「聖母マリア、聖ヨハネと三人の聖女」、ボッスの「聖アントニウスの誘惑」、ジョヴァンニ・ベルリーニ「聖母子」(一四八八頃)など、ヨーロッパの古典もずらりと陳列されている。  こうして見ていると、ヨーロッパ絵画史上の古典からエコール・ド・パリに至る一貫した収集の姿勢を感じることができる。それはシャトーブリアンとその収集の協力者、元イタリアの画商バルディという共通の優れた現代感覚をもつ人物によって集められたからであろう。この統一性のあるコレクションは見事である。  ブラジルには日系人が七十万人もいるという。イタリアからの移民はもっと多くでポルトガル、スペインからはさらに多くの人々が移住している。こうした移民のエネルギーがブラジルという国を力強いものにしているようである。日系の芸術家たちの活躍も注目を浴びている。  サンパウロ・ビエンナーレも世界的に有名になってきている。ブラジルにおける文化的な発展はこれからである。 出所:『美術館へ行こう』長谷川智恵子
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