名称:「2021年度 第1回コレクション展」京都国立近代美術館
開催期間:2021年3月23日(火)~6月13日(日)
前期:3月23日(火)~5月9日(日)
後期:5月11日(火)~6月13日(日)
開館時間:午前9時30分~午後5時 ※ただし金、土曜日は午後8時まで開館
※いずれも入館は閉館の30分前まで
※新型コロナウィルス感染拡大防止のため、開館時間は変更となる場合があります。来館前に最新情報をご確認ください。
観覧料
一般 :430円(220円)
大学生:130円(70円)
高校生、18歳未満、65歳以上:無料
※( )内は20名以上の団体
住所:〒606-8344京都府京都市左京区岡崎円勝寺町
TEL:075-761-4111
URL:京都国立近代美術館
当館所蔵・寄託の西洋近代美術の優品を紹介するコーナーです。今回は「胸像」をテーマに作品を選びました。「胸像」とは、人物の頭部および胸部をふくむ身体上部を表した彫刻または絵画で、古くはエジプト新王国時代の死者の胸像の作例があります。特にローマ時代には、現在でもルーヴル美術館などで見られるように、皇帝や共和制の行政官などの記念的胸像が数多く作られました。中世に一旦衰微するものの、胸像(画)制作はルネサンス時代に再び活性化し、その後西洋美術において最も古典的でアカデミックな人物表現の一形式とされてきました。この伝統的胸像におけるモデルは、歴史や当時の社会における重要人物であり、そこで優先されるべきは、その人物の社会的特性の正確な描写であって、その人物の外見的特徴の精緻な再現ではありませんでした。しかし19世紀以降、「人間」についての各種学問領域の発展を背景に、胸像のモデルが市民階級へと拡がり、それに伴って「肖似性」が求められるようになりました。その端的な事例を、制作に写真を参照していたと伝わる、新古典主義絵画の巨匠アングルの作品に見てとることができます。20世紀になると、モデルの外見的特徴だけではなく、内面性の描写へも強い関心が向けられますが、その表現方法模索の過程において、芸術家自身の個性の表出が再現性以上に重視されることになります。この変化は、20世紀の画家たち、たとえばゴッホやピカソによる胸像画を見ると、モデルよりも作者の名をまず思い浮かべる、という私たちの経験に明らかです。
マイヨール自身が「想像上の詩的な胸像」と呼ぶ《ヴィーナスの胸像》を除き、ここで紹介する絵画作品の制作過程には具体的なモデルがいたはずです。しかしいずれにも、当時の恋人の名前をタイトルにもつモディリアーニ作品にすら、画面にモデルを特定できる明確な情報は描かれていません。私たちが見てとるのは、例えばルノワールの作品においては、帽子の薔薇と明るい朱色の服と輝く肌、それに反するアンニュイな視線が表現する若さと生命力です。モディリアーニの作品では、セザンヌや原始彫刻などのプリミティヴィズムから影響を受け、彫刻制作を経て、イタリアの古典的作品を参照して築いた独自の造形に、キスリングの作品では、薄い透明性の絵具を何層にも塗り重ねる古典的手法から得られた色彩の深い輝きと明快なコントラストに、つまり両作品では絵画における構成や色彩の実験に目を奪われます。唯一、《パリジェンヌ》という別称をもつヴァン・ドンゲンの作品のみが、まっすぐ正面を見つめる力強い眼差しと豪奢な衣服・装飾品によって、誰かは特定できないまでも、モデルが社会的ステータスの高い自立した女性であることを伝えています。
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