名称:「三越創業350周年 千住博展 -伝統と革新-」日本橋三越本店
会期:2023年11月22日(水) ~ 2023年12月4日(月)
会場:本館6階 美術特選画廊 最終日午後5時終了
住所:〒103-8001 東京都中央区日本橋室町1-4-1
TEL: 03-3241-3311
URL: 日本橋三越本店
伝統と革新
日本文化には長い歴史の積み重ねがある。日本は西から東へと文化が伝播してきた最終の到達点だ。時空を渡った国際色豊 かな文物は日本の四季に恵まれた風土で洗練され、長い時間をかけて熟成された。そして日本独自の文化が構築されていった。
それらの過程で、大切に「手渡し」で守り継いできた意識やプロセスを「伝統」という。守るだけではその内実はいずれ 新たな強い刺激の中で消滅する。逞しく息づくには、歴史を重んじながらも常に自己改革の意識を並走させる駆動力が必要だ。 すなわち、革新こそが伝統の要諦と言える。
かつて大徳寺聚光院の襖絵を描かせていただいた時のことだ。廊下を隔てて狩野永徳の「四季図」。花鳥で国宝に達した 絵画の頂点の一つだ。歴史の中で淘汰されないためには比較されないものを描かなければならない。それはできるかもしれ ない、と思うに至ったのでこれに挑戦した。なぜなら永徳はもうこの世の住人ではない。生きている私は、永徳に敬意を払い、 日本美術に軸足を置きながらも、類型でない絵を描けばいいと考えたのだった。
過日もニューヨークの私が参加する大きな企画展で、国際的な多様な出自の作家と作品に囲まれた。世界には実に優れた芸術 家達が多々いると再認識した。この中で渡り合うには、自分の文化的ルーツを重んじつつ、独創的であることだ、と改めて思った。
そのような意識で、今回三越創業 350 周年千住博展に向け制作した。私は滝の内側から外を見て、世界は多様な色彩に 満ちている、すなわち世界は光に溢れている、と感じた。芸術は世界の欠落を指摘し、美で補完することにほかならないと 私は歴史から学んできた。世界では戦争が続き、悲惨な出来事は後を絶たない。この先の見えない時代、芸術の真価を掘り 下げ、新たな歴史を切り拓く「伝統と革新」の現在がこの視線の彼方に開かれると思って、これを描いた。ご高覧いただけ れば幸いである。
千住博
1958 年 東京都生まれ
1982 年 東京藝術大学絵画科日本画専攻卒業
1984 年 同大学院修士課程修了 修了制作藝大買上
1987 年 同大学院後期博士課程単位取得満期退学 研究制作東大買上
1995 年 第 46 回ヴェネツィアビエンナーレ 名誉賞受賞(イタリア)
2002 年 第 13 回 MOA 美術館 岡田茂吉賞絵画部門 大賞受賞
2003 年「大徳寺聚光院の襖絵」展(東京国立博物館)
2006 年 第 6 回光州ビエンナーレ(韓国)
2009 年 家プロジェクト「石橋」母屋「空の庭」完成(ベネッセアートサイト直島、香川)
2011 年 軽井沢千住博美術館開館 第 5 回成都ビエンナーレ(中国)
2015 年 第 56 回ヴェネツィアビエンナーレ「Frontiers Reimagined」展出品(イタリア)
2016 年 薬師寺国宝東院堂(奈良)にて個展
2017 年 第 4 回イサム・ノグチ賞受賞
2018 年 日米特別功労賞受賞(ニューヨーク商工会議所)
2021 年「瀧図」(高野山金剛峯寺襖絵)が第 77 回恩賜賞および日本芸術院賞受賞
出雲大社に奉納
シカゴ美術館「Senju’s Waterfall for Chicago」 同美術館収蔵
2022 年 第 4 回日米協会金子堅太郎賞特別賞受賞
2023 年 ヴィクトリア&アルバート博物館(英国)収蔵、常設展示始まる
これまでに作品はメトロポリタン美術館、ロサンゼルス・カウンティ美術館(米国)、國立故宮博物院(台湾)など、 国内外の主要美術館に収蔵、常設展示されてきた
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